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2020/06/28『サバンナ』『学校』『真実』

 え? 何か面白い話をしてくれ?

 そんな無茶なこと言わないでくれないかなぁ。

 ……んー、でも、昔体験した不思議な出来事についてなら、話せるかな。

 信じてもらえないかもしれないけど、一応ノンフィクション。真実しか言わないよ。


 これはねぇ、小学校に通ってた時の話だよ。

 担任の先生が、魔法使いだったんだ。

 ……そんなにぽっかり口開けないでよ。もう、ハエ食べちゃっても知らないからね。

 んで……そうそう、福山舞先生が魔法使いだったって話をしようとしてたんだった。

 福山先生はすごいんだよ。

 季節を変えることもできちゃうし、壊れたものを一瞬で直すこともできる。ほかにも、体調が悪い子がいたら、保健室に連れて行かなくても先生の魔法ですぐに元気になっちゃうから、保健係の仕事はほとんどなかったよ。

 ……でも、一番びっくりしたのはあの魔法かなー。

 ある日の四時間目。社会か何かの授業で、サバンナの光景を見たんだよね。教科書に載ってた写真で。

 で、授業が終わって、給食の時間になっても、みんなサバンナの写真で盛り上がってたんだよね。

 何であんなに盛り上がったのかねぇ……今はもう分からないけれど、当時は多分、自分が知らない世界への憧れ、みたいなのがあったんだと思うんだ。

 それでみんなで「サバンナに行ってみたいね」なんて言い合っていたら、それを聞いていた先生がパンッて手を叩いてこう言ったんだよ。

「サバンナを見てみたい人、挙手!」って。

 凄い勢いでみんな手をあげたよね。もちろん自分もその中に混ざっていたよ。

「それじゃあ、給食の後、後片付けが終わったら、みんなここに集まってね。いい?」

 公には言われなかったけど、どういう意味かは分かったから、みんな言うことを素直に聞いたよ。

 その日の片付けの早かったこと! 福山先生も目を丸くしていたね。

 んで、全員が教室に戻ってきたのを確認して、先生は教室の扉に魔法をかけたんだよ。そして、がらがらっと扉を開けて……。

 ……予想はできていたはずなのに、全員、目の前の光景に言葉を失ったよ。

 だって、外にはサバンナが広がっていたんだから!

「遠くに行き過ぎなければ、外に出てもいいわよ」

 福山先生の言葉に、みんなは歓声をあげながら駆け出していった。

 凄かったよ。ちゃんと風も吹いていて、近くの草は千切ればちゃんと切れっ端が手に残った。上履きはざらざらの地面を踏みしめていたし……決して、夢や幻じゃなかった。

 そのまましばらくはしゃいでいたんだけど、福山先生が「そろそろ休み時間も終わるし、戻るわよー」って声をかけてきたから、みんな渋々帰ってきたよ。

 全員が教室に戻ってきたのを確認して、福山先生は教室の扉を閉め、魔法を解いたんだ。

 その瞬間、隣のクラスの友達がガラッと扉を開けて中に入ろうとしてきたからもう、びっくりしたよね。

 あとは……やっぱり、魔法の時間は終わっちゃったんだなって、ちょっとだけ、がっかりもしたかな。


 ――こんなもんでいい? 面白いかどうかは知らないけど、満足した?

 ……ああ、そう。なら良かった。

 ねぇ、自分は話したんだしさ、次はそっちが話してよ。面白い話でも、怖いのでも、近況報告でもなんでもいいからさ。

 あ、でもつまらないのはナシで。

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