2020/06/24『森』『占い』『学校』
――ねえ、この学校の七不思議、知ってる?
昨日、私が友人に囁いた言葉が、ふと、蘇った。
この学校には、七不思議なんてない。創立二十五年目の、比較的新しいこの小学校には。
学校の七不思議なんて、縁遠いものだ。
ないなら、作ってしまえばいい。そして、ゆっくりと広めていけばいい。
そんなことを、考えてしまった。
ここは、夜見月市。
不思議なことが起こる街だから。
だから、噂さえたてば、七不思議が現実になってもおかしくないんじゃないかな、なんて思ってしまった。
――七不思議、その四。夜の図書館に忍び込むと、そこはどこまでも続く森に変わっている。その森の中には一軒の小屋が立っているから、そこまで迷わずにたどり着くこと。もし迷子になったら……二度と、森からは出られない。
――もし小屋にたどり着けたら、扉を三回ノックして、『こんばんは、こんばんは』って言って、中に入るんだよ。そうすると、中に占い師のおばあさんがいるんだ。おばあさんは、一つだけ占いをしてから家に帰してくれるよ。……あ、あと、その占いは、決して外れないんだって。
『その話、ほんと?』
でっちあげの七不思議を聞いた友人は、目を輝かせて訊いた。
――ほんと、だよ。
そう答えると、友人は真面目な顔になって言った。
『……行ってみようかな、夜の図書館』
占ってほしいことがある、と彼女は教えてくれた。
その子は、学校に来なかった。
昨日の夜、家を無断で出てから、行方が分かっていないのだという。
……まさか、本当に、でっち上げの七不思議が現実になってしまうなんて。




