2018/05/18『夜』『希望』『怠惰』
ここは月が5つ登る世界。
この世界では、5つの月が全て新月の夜は夜更かししてはならないという。
5つの月が全て新月の夜、月による封印が破れ、それが現れるからだ。
その黒い奴はなんとも呼びようがなかったので、itと呼ばれた。
itは夜更かしをしている人に「影の子」を取り憑かるという。だからその夜は早く寝なければならないのだ。
この夜のことを人々は「itの夜」と呼ぶ。
もしこの話を本気にすることなく夜更かしするようなことがあると……
「眠くないよう。パジャマに着替えるのも布団に入るのもめんどくさい」
なにもかもめんどくさがる彼女は、怠惰の子と呼ばれていた。
その夜はitの夜だった。
itは最近なかなか「影の子」を取り憑かせられないことを不満に思っていたが、ようやく影の子を取り憑かせることができる人を見つけたのだ。
怠惰の子だ。
itは今までの不満を全て怠惰の子にぶつけ、大量の影の子を取り憑かせた。
itは久々に満足し、日が昇ると共に消え失せた。
怠惰の子は、全てを失った。
普通影の子に取り憑かれると、少しの希望を奪われる。
しかし、あまりにもitが影の子を大量に取り憑かせたがために、怠惰の子は全ての希望を失った。
怠惰の子には不幸ばかりが集まった。
怠惰の子は、自分と世の中のもの全てに絶望し、自ら命を絶ったのだった。
月が1つしかないこの世界にも、itに似たようなものがいるらしい。
しかも、月が1つしかないから、itに似たそれを封印することは不可能だそうだ。
もし夜更かしをしてこの物語を読んでいる人がいるならば……
次にitが影の子を取り憑かせるのは、貴方かもしれない。