表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/430

2020/06/11『紅茶』『伝説』『紫』

 どうも、咳が止まらない。

 ずっとずっと、息苦しくて仕方がない。

 ……どうしよう。

 私……死ぬんじゃないかしら。


 ママが、ずっと咳をしてる。

 苦しそうで、見ていると胸がキュッ、ってする。

 パパが看病して、家事を全部やっている。

 あたしも、お手伝いしてるのよ。

 ママはずっと、ベッドで寝ている。

 なのに、ずーっと、咳をしてる。


『どんな病気でも治せる、伝説の薬屋が来ているらしいよ』

 パパに頼まれておつかいに行った、帰り道。

 噂を聞いて、考えた。

 ……その『伝説の薬屋さん』なら、ママの咳も治せるのかな?

 元どおり、元気になるのかな?

「あの、すみません」

 道ゆく人に、尋ねてみる。

「『伝説の薬屋さん』って、どこにいますか?」


「いらっしゃい、小さなお嬢さん」

 いっぱい歩いて、たどり着いた先。

 小さなテントに、その人はいた。

「……ママの咳が、止まらないんです。ここ最近、ずっと、ずっと。お願いです、ママの咳を治してください」

 叫ぶようにお願いすると、その人はにっこりと微笑んだ。

「必ず、治してあげましょう。ほら、入り口に立っていないで、もっと中へ」

 手招きされて中に入ると、そっと頭を撫でられた。

「えらいねぇ、一人でここまで来たんだね」

 その人は、小さな小包を取り出した。

「この中に、紅茶の茶葉が入ってる。この茶葉でお母様にお茶を淹れてあげなさい。紅茶が、咳の薬になるから」

「ありがとうございます! ……あの、お代は……」

「お嬢さんからはもらえないよ。タダであげるから、早くお母様にそれを届けてあげなさい」

 優しい笑みを浮かべるその人に、深く頭を下げ、家に向かった。


「ママ! これ、お薬!」

 娘が突然、そう言って、カップに入った紫色の液体を持ってきた。

「ごほっ……これ……なあに?」

「だーかーらー、おくすり! この紅茶、咳に効くんだって!」

 咳が止まらない中、カップを手に取る。

 効くかどうかなんて分からないけれど、娘の気遣いが嬉しかった。

「ありがとう……ごほごほっ」

 紫色の紅茶を、飲み込む。

 その瞬間、何故か気分が良くなった気がした。

「……どう?」

「あら……咳、止まったわ!」

 息が、苦しくない。

 思い切り、空気が吸える。

「ありがとう……!」

 嬉しくて、嬉しくて、たまらなくて。

 ベッドから降りて、愛しい娘を抱きしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ