2018/05/17『苦い』『時間』『本』
更新を再開致します!
それは、とても濃くて、苦かった。
最近の読書のお供は、濃くて苦い珈琲。
君の好みの珈琲はブラック無糖の濃い珈琲。
君に珈琲を作らせると、いつもこんな味だった。
私の好みは砂糖もミルクもたっぷりのもの。
なのに「珈琲作って」と頼むといつもブラック無糖。
君の好みの、濃い珈琲。
私は砂糖とミルクたっぷりのが飲みたいのに!
君とは好みが全然合わない。
君が好きな本はファンタジー。
魔法や奇跡が溢れる温かな話。
私の好みはそうじゃない。
もっと人間らしさが滲み出るような暗い本。
君は私の誕生日に本をくれた。
包みを開く。
タイトルは「路地裏の奇跡」。
私が嫌いなジャンルの本じゃない!
私は時間を持て余す。
今まではこんなことなかったのに。
今まではいつも楽しかったのに。
「君のせいだよ」
私は口から呟きを零す。
君がくれた「路地裏の奇跡」は、私の好みじゃないけれど。
好みじゃないけど5周目だ。
好みじゃない珈琲をお供に、5周目。
君の幻影を追い掛けて。
私はこの珈琲を飲む。
本の中に君がいそうで。
私はこの本を読みふける。
この苦い珈琲に「奇跡」を混ぜたら、これは美味しくなるかしら。
混じり気のない珈琲なら、なんでも溶かしきれるわよね?
最早この世にいない君に。
私は淋しく問いかける。