宝箱のタペストリー

2020/06/05『高層』『青』『真実』

　ずっと昔から、青が、欲しかった。

　だから、この場所に住みたかった。

　海の街にある、この高層マンションの最上階に。

　空の青が欲しかった。

　白い雲が浮かぶ、透き通るような昼の青が。

　砂子が散りばめられた、宝石のような夜の青が。

　海の碧(あお)が欲しかった。

　潮の香りがほんのりと漂う、爽やかな碧が。

　炭酸のように泡をたて、満ち引きを繰り返す碧が。

　この街で一番高いところなら、空に手が届きそうな気がして。

　この場所なら海を一望できると信じて。

　だから、ここに住みたかった。

　決して富があることを誇るためとか、そんなんじゃないんだ。

　そんな嘘には惑わされないでほしい。

　ただただ、真実を語ってるだけなんだ。