2020/06/01『畑』『揺らぎ』『ナイフ』
さて、今日も仕事をするか。
自分の畑に着いたわたしは、ひとつため息をついた。
……今日は、非常に暑い。
数メートル先にあるカカシが揺らいで見えるほどだ。
しばらく畑仕事をしていると、突然目の前がぐらん、と揺らいだ。よろけて、地面に手をついてしまう。
――目を閉じる。
……なんだこれは。さっきまではここまで揺らいでなかったのに。というか……もはやこれは、目眩に近いぞ……?
ゆっくりと目を開けたわたしは、思わず「……へっ?」と間抜けな声を出していた。
なぜって、いま自分のいる場所が、畑ではなくだだっ広い草原になっていたのだから!
そのうえ、目の前には見たことのない魔物のようなものがいるのだから、驚かずにはいられない。
……まて。目の前に、魔物?
わたしの命が、危ないじゃないか。
魔物はじっとこちらを見ている。まだ攻撃してくる様子はないが、品定めでもするかのように、ジロジロと見つめている。
懐に、昼ごはんの際にリンゴの皮を剥くのに使おうと思って持ってきた、果物用のナイフがあることを思い出す。
「……えいっ!」
ぐさり、と勢いよくナイフを突き刺せば、魔物はその場に倒れてしまった。
「やった!」
……と喜んだのも束の間。
目の前にある倒れたカカシを、それに刺さった果物用ナイフを見て、ハッとした。
――いつの間にか、辺りはいつもの畑に戻っていた。




