2020/05/28『雪』『夕陽』『未来』
雪が、しんしんと降り積もっていた。
息を吐けば、目の前がほわりと白く染まる。
さくさく、雪を踏んで歩く。
「ねえ、ゆーちゃん」
「ん?」
友人がこちらを振り返る。
「綺麗な雪だね」
「そうだねぇ」
「私の地元じゃ雪降らないから、なんか嬉しいな」
「えー、そう? うちはやだな、電車止まるし」
「電車かー。私が使ってる電車は雪に強いから、あんまり気にしたことないな」
「いいなー」
隣でゆーちゃんが、羨ましそうにこちらを見ている。
「さっちゃん、ゆーちゃん、おはよ」
唐突に降ってきた、別の友人の声。
「おはよう、みぃちゃん」
「おはよー。電車大丈夫だった?」
「んー? ぼくはいつもよりも早く出たからねー」
さくさく、雪を踏んで歩く。そのうち、向かい側から仲良しグループの最後の一人がやってきた。
「三人とも、おはよーっ!」
「おはよう、たかちゃん」「おはよー」「おはよ」
大学の正門前で合流して、一緒に構内に入る。
「こんな未来が来るなんてさぁ、想像してたー?」
お昼休みの時間に、たかちゃんが突然、そんなことを言い出した。
「うーん……正直、もう二度と日常が戻ってこないかも、とは思ったかな」
「ぼくもゆーちゃんと同じだなー」
私はかくかくと頷いた。口の中にちょうどご飯が入っていて、喋れなかったのだ。
ごくり。食べ物を飲み込んで「でも」と声を出す。
「私はこの日が来るって信じてたよ。……ってか、信じないとやってらんなかったしさ」
「まあねー。……あっ」
みぃちゃんが窓の外を見て声をあげる。
「雪、やんでるよ」
「本当だ! ねえ、次の三限はみんな空きコマだし、雪合戦でもしない?」
「たかちゃん、うちはそれ、やだよ……痛いじゃん、雪玉。せめて雪だるま作るとかさあ、安全な遊びにしようよ」
「私もゆーちゃんの意見に同意かな……」
やいのやいのと話しているうちに、昼休憩の時間が終わってしまった。
四限が終わり、四人で揃って外に出た。
「うわぁ……! めっちゃ綺麗!」
思わず叫んで駆け出して、雪で滑って転びそうになった。なんとか堪えたから転ばずに済んだけど、三人には大爆笑された。
「さっちゃん、慌てすぎー!」
たかちゃんのからかうような声が飛んでくる。
「しょうがないじゃん! 夕陽がこんなに綺麗なんだもん!」
「確かに綺麗だねー」
「ぼくもそう思うよ。……すごいなぁ、これ」
慌てすぎず、でも急いで追いかけてきてくれた友達。四人で一緒に、空を見上げる。
こうしてみんなで一緒にいられることが、とても幸せだった。




