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2020/05/24『姫』『絶望』『魔術師』
塔に閉じ込められた姫君は考えていた。
どうやったら、自分をここに閉じ込めた人を絶望させられるのだろう、と。
姫君は魔術師だった。まだ若く、歳は十二歳だったが、恐ろしいほど賢くて、今は失われてしまった魔法ですら身につけてしまった少女だった。
けれど、自分をここに閉じ込めた魔術師には敵わない。それを、姫君は分かっていた。だから自分をここに縛り付ける魔法を解くことが出来ないし、外には出られない。
いっそのこと、自分が死んでしまえばいいのかもしれなかった。ここで自分が苦しんでいることが、ここに閉じ込めた魔術師にとっての幸せなのだろうから。自死の魔法も、彼女は使おうと思えば使えるのだ。
けれど、そんなことをしたら負けだと思った。あの魔術師の思う壺になってしまうような気がして。
……どうしたら、いいのだろう。
魔法で窓の外に助けを求めながら、独り、考えていた。




