204/430
2020/05/22『王国』『少年』『黒』
少年は夢を見た。
大きな城の中、塔に閉じ込められる姫君の夢を。
地面につきそうなほど長い黒髪を揺らしながら、彼女は塔の外を見ていた。
「……助けて」
声にならない声だった。
けれど、お姫様の口は間違いなくそう動いた。
彼女を助けなければ。
そう思った時、少年は夢から覚めた。
「……夢か」
けれど、夢にしてはリアルだったな、と思った。
どこかの異世界にある王国の、お姫様が塔に閉じ込められているような、そんな気がした。
でも、ありえないと首を振った。
異世界なんて、あるわけがないのだ。
「……助けて」
だから、今聞こえた姫君の声も、きっと幻だ。
日付を変えてしまい、すみません……。




