2020/05/09『砂漠』『白』『空白』
さらさら、さらさら。
空っぽの入れ物に、何かが注ぎ込まれている。
さらさら、さらさら。
白い、白い、細かい何か。
さらさら、さらさら。
――言葉だ。
さらさら、さらさら。
文字が、言葉が、まるで砂のように。
さらさら、さらさら。
入れ物の空白を満たしていく。
さらさら、さらさら。
入れ物の底から、逃げていく。
さらさら、さらさら。
仕方がないさ、不良品だから。
さらさら、さらさら。
穴あきだから、砂をこぼしていく。
さらさら、さらさら。
それでも言葉は降ってくる。
さらさら、さらさら。
大丈夫だよと、ここにいるよと。
さらさら、さらさら。
あなたがどんなに虐げられても。
さらさら、さらさら。
いつでもここに、ここにいるから。
さらさら、さらさら。
あなたの味方であり続けるから。
さらさら、さらさら。
だから大丈夫、大丈夫だよと。
さらさら、さらさら。
言葉の砂が降り続く入れ物。
さらさら、さらさら。
まるで、それは砂漠のよう。
ぽたぽた、ぽたぽた。
そこにゆっくりと、雨が降った。
さらさら、ぽたぽた。
砂は涙で湿り、固まり。
さらさら、ぽたぽた。
いつしか入れ物の穴を塞いだ。
さらさら、ぽたぽた。
ゆっくり入れ物は言葉で満たされる。
さらさら、ぽたぽた。
……もう一度、前を向いてみようかな。




