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2020/05/07『酸っぱい』『高層』『本』

『えーでは、本日の天気予報です。

 今日は、午前中にあめが降る予報です。皆様、出かける場合はコウモリ傘と複数枚のエコバックを、外出しない場合は網を用意しましょう』

 ……おっ、久々のあめマーク。ちょうどいい。

 わたしはノイズ混じりのラジオを切り、倉庫から大きめの網とたくさんの袋を用意した。

 いつ降り始めるだろう。そう思ったそのとき、あめが屋根を叩く、ばらばらという音がした。

 わたしは、高層マンションの最上階であるこの部屋の窓から網を出し、あめを受け止める。

 重みが、少しずつ増していく。

 色とりどりのセロハンに包まれた丸い飴が溜まってきたら、いったん室内に入れ、網をひっくり返す。そして、また外に出す。それを何度も何度も繰り返すと、飴の山が出来上がる。

「んぁー、久々だから疲れるなぁ……お、止んだな」

 お日様が、ひょっこりと顔を出す。それを確認したわたしは、部屋の中に散らばる飴を袋に詰め始めた。こうでもしないと、邪魔で仕方がない。

 作業を始めてからしばらく経った頃。飴が詰め込まれた袋がいくつも出来上がり、入りきらなかったものが数個、床に置かれたままとなった。袋は飴貯蔵庫にしまっておいて、残された飴は透明な皿に乗せる。それを持って、わたしは書斎に向かう。

 書斎の机に皿を置くと、それに乗った飴のうち一つを手に取った。黄色いフィルムを開けて中身を口に含むと、ほのかに酸っぱく、そして甘かった。

 椅子に腰掛け、机の上に置いたままだった読みかけの本を手に取る。

 この世界になぜ飴は降るのか、その理由を想像しながら書かれた小説をまとめたアンソロジー。

 本を開き、ページをめくり、現実と虚構が混じり合った世界にわたしは潜り込んでいく。

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