2020/05/06『太陽』『窓』『占い』
太陽が出ない時だけ開く、占い屋がある。
小さなこぢんまりとした家の、小さな窓。それが開いていたら、その横に「占い お代はいりません」と書かれた看板がかかっていたら、開店している合図。
一人の青年――占い師が、その窓越しに客を占う。
月が地上を照らす夜。空が全て厚い雲で覆われる天気の時。そんな時にひっそりと開く占い屋は、よく当たると評判だった。
「ねえ、どうして太陽が出ているときは、やってないの?」
とある雨の日に、常連の少女が店主の青年に問いかけた。
「私ちっちゃいから、夜はお外に出られないの。でもほら、ここは雲があまり来ないでしょう? だから、あまりここに来られないのよ。それが寂しいわ。あなたの占いはよく当たるし、それに、あなたと話すのがとっても楽しいのに」
「……わたしは、太陽が苦手でしてね」
目深にフードを被った青年は、そっと微笑む。
「お嬢ちゃん、わたしの秘密を、教えてあげましょうか?」
その言葉を聞いた少女は、一瞬目を輝かせたが、すぐに首を振った。
「ううん、いい。だって、秘密は言いたくないから秘密なんでしょう?」
そう首を傾げる彼女に、青年は目を見張り、そしてうなづいた。
「そうですね。隠したいことは、隠していてもいいんですよね」
青年はそう言うと、嬉しそうに笑った。
人里離れた場所でひっそりと暮らす、占い師の青年の正体は、誰も知らない。




