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2020/05/02『暮らし』『人肌』『少女』
ダイニングに、蜘蛛が、出た。
手のひらサイズの、大きめの奴だ。
けれど、少女はうろたえることなく、近くにある新聞紙を手に取り、筒状に丸めた。
そろりそろり、近付いて……バシン!
新聞紙を持ち上げると、そこにはひしゃげた蜘蛛がいた。
「よし、これで大丈夫……」
キッチンから生ごみを捨てるための小さなビニール袋を持ってくると、死骸に触れないように袋に入れ、口を縛り、捨てた。
「これでよし、っと……もう慣れたよねえ、蜘蛛やゴキブリがよく家に出る暮らしにもさ」
この家の裏には川が流れているし、木がうっそうと生えている小道だってある。その環境のせいか、ここにはよく虫が出る。
ふと、キッチンの方向から、軽やかな音が聞こえた。お風呂が沸きました、と言う声が響く。
「ん、ちょうどよかった。入るかー」
お待ちかねの入浴タイムだ。人肌程度の温かさに設定したお湯は、ちょうどいい温度になっているだろう。
うーん、とひとつ伸びをして、少女は脱衣所へと向かっていった。




