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2020/04/29『天邪鬼』『太陽』『教皇』

 教皇は、全ての人に対して優しく親切に接していた。

 だから、周囲の人々は「なんで素晴らしいお方なんだ」と、彼のことを敬っていた。

 しかし一人だけ彼のことを避け続ける少年がいた。

「ほっといてくれよ、助けなんていらねえから」

 まるで人を警戒する野良猫のように、ぼろをまとった少年――名前をウルーフと言った――は、いつも教皇の手を払い除けていた。

 けれど、教皇はずっとその手を差し伸べ続けてきた。

 そうすることしか、できなかったから。


 そんなある日、教皇が散歩していると、太陽の光が差さない路地裏にうずくまる誰かの影が見えた。

「教皇様、ごめんなさい。僕、本当は嬉しいんです。温かなその手を差し伸べてくださることが。でも、僕天邪鬼だから、つい振り解いてしまうんです。それでも諦めずに、手を差し伸べてくださって……」

 その声の主は、ウルーフだった。

「――ウルーフ」

 教皇が声をかけると、彼はびくりと肩を震わせた。

「……な、なんだよ」

 何も言わずに、教皇は手を差し伸べた。

 少年はそれを振りほどこうとして、けれど、ゆっくりと、その手を握りしめた。

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