2020/04/28『太陽』『怠惰』『ガラス』
窓の外で輝く太陽。
その温かさを感じながら、私は一つため息をついた。
ふと、目の前の窓ガラスに、一筋の水滴が流れたように見えて。
驚いて瞬きをしたら、消えていて。
でもその残像が残っていて。
雨は降っていない。
水をかけられたわけでもない。
――ああ、窓ガラスが、泣いたんだ。
そんな言葉が、自然と浮かんだ。
怠惰な生活を送る息子が、羨ましかった。
ひたすら寝て、ゲームして、遊んで。
勝手にご飯は出てくるし、服はいつでも綺麗だし。
ああ、なんて素晴らしいことだろう。
息子がもしも王子なら、その召使がこの私だ。
自分が産んだ子供なのに、時々ふっと思ってしまう。
――ああ、もう、この子を、捨てたいな、と。
そして、そんなことを考えた自分が、怖くなるのだ。
夫も同じことを考えている。
――なんのために働いているのか、分からない。
そう言って泣いた声が蘇る。
――なぁ、俺たちは召使じゃないんだ。
ある日息子に、夫は言った。
すると息子は、きょとんとした。
――どうしたの、そんな当たり前のこと。
不思議そうに、おかしなことを言われたように。
――お父さんとお母さんは、お父さんとお母さんだよ。当たり前じゃん。
そう言って息子は、笑っていた。
窓の外を、眺めてみた。
窓ガラスの涙は、もう見えない。
太陽に乾かされてしまったのだろうか。
――ねえ、お願いだから、太陽さん。
私の涙も、乾かしてください。




