2020/04/27『サバンナ』『魔法』『希望』
青年が独り、旅をしている。
サバンナを訪れた彼は、チェキで一枚写真を撮った。
「ん、結構うまく撮れたんじゃないかな」
現れた写真を満足げに眺め、そっと鞄にしまい込む。
携帯を見て、「あっ」と青年は声をあげた。
「今日、あいつの誕生日だ」
何か、贈り物をしたい。けれど、サバンナからは何もおくれないか……。
「……いや、そんなことはないな」
青年はそう呟いて、先ほど撮った写真を手に取った。
今日、とある男が誕生日を迎えた。
たくさんの人に贈り物をもらい、祝福の言葉をもらい、嬉しそうに笑っていた。
しかし、彼はとある人物から祝ってもらえないことに、少々がっかりしていた。
「――あいつ、元気かな」
その人物は、今サバンナに訪れている旅の青年だった。
二人は幼馴染で、昔から仲が良かったのだが、青年が旅に出てから、一度も再会していない。
それでも、毎年誕生日には手紙が届いていたから、きっと今年も。
そんな淡い希望を抱いて、青年からの手紙を待っていた。
と、その時。
不意に、何もない空間から、一枚の紙がひらひらと舞い降りてきた。
「なんだ、これ……」
それは、サバンナの写真だった。裏面を見てみると、そこには、青いペンで文字が綴られている。
『誕生日、おめでとう。
これは、今僕が訪れている場所の写真だよ。綺麗だろう?
この景色を、君に贈ろう。
君に素晴らしい一年が訪れることを願って。
唯一無二の大切な人へ 幼馴染より』
その文字を読んだ男は、嬉しさのあまり、涙を流した。
「……何もないところから、あいつの手紙が出てくるなんて。まるで、奇跡みたいだ」
「――いまごろあいつ、『奇跡じゃないか』なんて言って泣いてるんじゃないかな」
旅の青年は、にっこりと笑った。
「あいつ知らないもんな、おれが魔法使いってこと」
ま、家族以外に言えない決まりだから、仕方ないか。
そう呟いて、彼は笑った。
「誕生日おめでとう、かけがえのない親友」




