2020/04/24『苦い』『太陽』『温かい』
窓から、眩しい光が差してくる。雲がいなくなり、太陽が出てきたようだった。外はきっとこれから温かくなるだろう。
私はカーテンをサッと閉める。ここ、ダイニングキッチンはそこまで過ごしやすい気温ではないが、オーブンレンジのそばに行けば、多少は温かい。ふわりと漂うクッキーの匂いに、思わず笑みがこぼれた。
さて、お菓子が焼き上がるのを待つ間に、ちょっと調べ物をしてみようか。
悪戯を仕掛ける前のような、そんなワクワクとした気持ちになりながら、床に置いておいた鞄から財布を取り出す。その中から一枚の紙を手に取ると、近くのスマホを反対の手で拾い上げ、そのままブラウザを開いた。使い慣れた検索エンジンに打ち込む言葉は『追跡サービス』。虫眼鏡のマークを押せば、郵便局のページが先頭に出てきた。
そうそう、これこれ。
『郵便追跡サービス』のページにアクセスし、そこにある赤い『個別番号検索』のボタンを押す。現れた空欄に、手元にある紙――ゆうパックの差出人控えに書かれた十二桁の問い合わせ番号を入力し、赤い『開始』のボタンをタップ。
さて、親友に宛てて出した荷物は、誕生日に届くようにと指定して差し出したプレゼントは、届いただろうか?
――『引き受け』が、五日前。わたしの家の最寄りにある郵便局。
――『中継』が、三回。これも全て、五日前。表示された郵便局の名前から、少しずつ荷物が親友の家に近付いていくのが分かる。
――『到着』が、四日前。親友の家の最寄りであろう郵便局で、荷物は指定日を待ったようだ。
――『ご不在のため持ち戻り』……か。
どうやら、親友はお出かけ中らしい。再配送依頼はないようだから、まだ不在通知には気付いていないのだろう。
ピーッ、ピーッ、ピーッ。
お、クッキーが焼けた。どれどれ、とオーブンレンジの扉を開け……思わず、叫んでいた。
「しまった……!」
そこにあったのは、丸焦げの茶色い物体。スマホに夢中になっていた私は、庫内の確認を全くしていなかったのだ。これは……絶対に不味いお菓子に仕上がっただろうな。
試しに一つ、口に放り込んでみた。硬くボロボロとした食感。あまりに酷い味に耐えきれず、慌てて取り出したコップに牛乳を注ぎ、一気飲み。
「……うん、苦い!」
久々のお菓子作りは、大失敗に終わった。




