2020/04/11『都市』『ロマン』『戸惑い』
「夢を叶えたいんだ。だから、絶対に東京に行く」
小さな頃から、おれはずっとそう言っていた。
都市に行けば、きっと毎日が輝かしく、起伏に富んでるのだろう。そんな街でなら夢が叶えられると、そう思っていた。まあ、ある一種のロマンのようなものを持っていたのかもしれない。
そんなおれは、大学進学を機に上京した。そして、夢を叶えるためにがむしゃらに努力した。勉強も、生活費のためのバイトも、夢を叶えるための行動も。全て、全力でやっていた。
けれど、忙しい日々を送るうちに、いつしか戸惑いを覚えるようになっていた。
……思っていたものと違うな、と。
想像ではこんなに苦労することなく夢は叶っていたはずだったし、都市になら欲しいものはなんでもあって、その中には夢だって含まれていたはずだったのに。けれど、それがないのであれば、どうしておれは上京なんてしたんだろう。
夢が叶わないかもしれない。一度でもそう思ってしまうと、常に全力で過ごす意味がなくなってしまう。
そして、一度でも気を緩めてしまうと、今まで見て見ぬ振りをしてきた疲れがどっと押し寄せてくる。そのせいか、体調を崩してしまった。
熱を出し寝込んでいる時、おれは懐かしい夢を見た。
幼い頃の自分が東京に憧れ、そこにいけば夢が叶うと信じて、都市につながっているはずの広い空に、そっと夢を託した日のこと。
ここでもし諦めてしまったら、あの日託した夢はどうなってしまうのだろう。高い空の上で忘れ去られ、それでも健気にずっと、おれに呼ばれるのを待っているのだろうか。
そう思った瞬間、おれは東京へと移動していた。
「おい、あの日の夢は、まだそこにいるのか」
空へと叫ぶと、温かな光が雲の切れ間からこちらへとさしてきた。……ああ、あそこに、いるんだな。
「まだ諦めねえからな!」
ふと、目が覚めた……眩しい。
夢で見たのと同じように、光がおれを包んでいる。
この光の先に、あの日託した夢がある。
「絶対に叶えてやる。この場所で」
いつの間にか、呟いていた。




