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2020/04/07『都市』『夕陽』『ガラス』
ここは、小さな小さな都市。
はるか彼方に、夕陽が沈んでいく様子が見える。
「今日も夜がやってくるねえ」
「そうだねえ」
ささやかに、ひそやかに、そんな会話が街に響く。
そこにいる人々は、一歩も動かない。
じっとしたまま、言葉を交わす。
「おや、雪だ」
誰かが呟く。
「本当だ、雪だ」
「黄昏時の雪か、『神様』も気まぐれだねえ」
「そうだねえ」
少年が、スノードームを置いた。
「綺麗な雪だなあ」
「こらっ、それはガラスでできているから勝手にいじらないでって言ったよね!」
少年の姉らしき少女が、彼を叱りつける。
「ごめんなさい。でも綺麗だから、つい……」
「まあ、気持ちは分かるよ? だから、雪を降らせたいときはお姉ちゃんに言ってね?」
「はあい」
姉弟は、ガラスの中の都市を眺め続ける。
窓から差し込む夕陽に包まれながら。




