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2020/04/02『苦い』『天邪鬼』『紅茶』
苦い、甘くないチョコをひとかけ、口に放る。
からころ、口の中で溶かしてみる。
うん、これが私好みの味。
噛んで飲み込み、ひとつため息。
あなたは私を、知り尽くした人。
そう、ついさっきも、そうだった。
「何か買ってこようか」と言われたけれど、私は「いらない」と返した。
本当は欲しいものがあったのに。
私が天邪鬼だから。
あなたは出かけて、帰ってきた。
「これ、欲しかったんでしょ」と、微笑んで。
渡されたのは、苦いチョコ。
そして、大好きなアールグレイ。
「いらなかったのに」
「嘘つけ。欲しかったんでしょ、天邪鬼さん」
あなたは楽しげに、ころころと笑った。
あなたが買ってきたアールグレイのティーバッグで、紅茶を一杯、淹れておいた。
そろそろ、美味しくできただろう。
一口飲み込んで、ふっと笑った。
自然と、口角が上がっていた。




