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2020/03/31『冷たい』『ガラス』『薬』

 少し白っぽく、光にかざせばきらきらと光る薬がある。

 これを読んでいるあなたは、上の文を見て、少し不思議に思ったかもしれない。どうやったらそんな薬ができるのか、と。

 しかし、実はとても簡単な話だ。

 ――その薬には、食用ガラスが入っているのである。

 

 さて、この文書を読んでいる皆様には、食用ガラスが開発されたきっかけとなる出来事をお話ししよう。


 何年も、何十年も前、一人の冒険者が道に迷い、人気(ひとけ)のない洞窟で野宿をすることになった。

 しかし運が悪かったのか、洞窟に入った日、季節は雨期に入ってしまったため冒険者は外に出られなくなった。

 冒険者は持っていた食料を少しづつ食べ、なるべく動かないようにして雨季を越そうとしたが、物事はそう簡単にいかないものである。

 彼は雨季を越す前に食糧を食べつくしてしまった。長い時間過ごせるだけの量は、なかったためである。

 仕方なく、彼はしばらく水だけを摂って過ごす生活をした。しかし、それにも限界がある。

 彼はある日、とうとう空腹に耐えきれなくなって、近くにあった冷たい石を手に取り口にした。食べられなくてもいい、ただ、何かを口に入れるという行為をしたかったのだ。

 本当は食べられないはずのもの。もちろん、満足したら吐き出すつもりでいた。

 しかし、口の中で石が溶けていくのを感じた冒険者は、驚いて目を丸くした。夢ではないかと頬をつねった。

 いったん吐き出してみると、石が一回り小さくなっていた。口の中で、溶けたためである。

 栄養があるのかどうかは知らないが、空腹はごまかせる。彼は喜んで、もう一度それを口にした。


 その後、何とか帰還した彼が持ち帰ってきたその石を調べたところ、食べられること以外はガラスの原料となる石と全く一緒であることが分かった。

 これをもとにして、まったく同じ石を生産できるようになれば、他の材料も食べられるものを開発できれば、食べられるガラスが作れるのではないか。そう考えた人々が研究開発を進め、ついに、食用ガラスの大量生産に成功したのである。


 最近では、食用ガラスは食料品――特に菓子類の装飾に利用したり、粉状にしたものを薬やサプリメントに混ぜたりして使われている。

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