2020/03/25『節制』『天邪鬼』『畑』
ウチは、みんな節制を心がけている。何事も度を越さないように、欲を出さないように。
だけど、ウチの畑にはたくさんの野菜ができる。まあ、毎日欠かさず、しっかりと水や肥料をやって、雑草を抜いて、虫を追い払って、と世話をしているから、当たり前か。
沢山の野菜ができても、ウチは最低限しか食べないから、どうしても余らせてしまう。
「まーたこんなに野菜ができたよ!」
「……ご近所さんに配りに行くか」
「そうするかぁ」
……というわけで、ウチでは何かできるたびに、ご近所さんへ配りに行く風習が出来た。
大抵の人は「ありがとう」「助かったよ」なんて言葉をかけてくれる。
けれど、ウチの向かいに住むイスカーだけは、そうじゃない。
「なんだ、また野菜か?」
「いいって、いらないよ」
そう。イスカーは、いつもお裾分けを断ろうとする。
けれど、あの人はアタシの幼馴染。あの人の性格なら、よーく知ってる。
だから、どんな言葉で断られようが、アタシは野菜を置いていく。
そうするとね、あの人は人気のない時に外に出て、その野菜を持っていくんだ。
とても嬉しそうに、笑いながら、ね。
イスカーは、素直じゃないからね。
あの人は、いつだって天邪鬼なのさ。




