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2020/03/20『希望』『伝説』『空白』

 ついったーあにばーさりー、と呟いた。

 スマホの画面、Twitterの通知欄。そこにはクラッカーのイラストと共に「今日はTwitter記念日です」の文字。――そうか、今日はこのアカウントを作ってから三年目の、節目の日。私がネットの空間で『廣瀬ハル』と名乗るようになってから、そんなに時間が経ったのか。

 何か呟こう、そう思って通知欄のクラッカーをタップした。


 ……言葉が、出てこない。

 伝えたいことはたくさんある。

 フォロワーさんへの感謝とか、日々タイムラインを見ていて思うこととか、他にも、たくさん。

 なのに、言葉にすると突然陳腐になってしまって。

 それが、とてつもなく、嫌だった。

 ツイートの作成画面で、書いては消してを繰り返す。結局、いくら時間が経っても、空白が埋まることはなかった。


 仕方なく、自動的に作成されるツイートをそのまま送信した。その後、やっぱり味気なかったかなと後悔したが、もう遅い。ツイートアナリティクスを確認したところ、既に二十人ほどが目にしている。つまり……フォロワーの約三割がこのツイートを見ている計算になる。一人二人ならまだしも、これでは消せないではないか。


 ……何も書けなかったけど、何か反応来ないかな。いいねだけでもいいけど、リプライが来たら嬉しいなぁ。

 いつも話しかけてくれるあの人や、この間オフ会で会ったこの人、好きな本が共通している人、あまり話さないけどいいねをいつもくれる人……いろいろな人のことを思い浮かべ、そんな希望を抱いた。


 その後はいつも通り、タイムラインを眺めていた。

 フォロワーさんのいいねで流れてきた、本の読了ツイート。古くから伝わる伝説に巻き込まれていく子供たちの異世界ファンタジー小説で、私もお気に入りの一冊だ。あれ、また読みたいなあ。

 春のお裾分け、と沢山の桜の写真を載せる人。たんぽぽや、スミレの画像もあった。素敵だな、といいねを押した。

 よく聞くラジオの、公式アカウントが宣伝をしている。そうか、今日は週に一度の放送日だ。楽しみだなぁ。

 好きな作家さんが、飼い犬の写真をあげていた。そのワンちゃんが可愛いのと、久々に寛げているというツイートに少し安堵して、いいねを押した。


 ふと、目の端で何かが動いた気がした。

 ちらり、と画面の下の方を見ると、通知が二件。

 トン、と鈴のマークをタップすると、さっきのツイートに対するいいねと、リプライが来ていた。

『廣瀬さん、これからもよろしくお願いします!』

 仲良しのフォロワーさんからの一言に、思わず微笑む。

『こちらこそ! 今度また、サイン会などの機会があったら、お会いしたいですね』

 返信をして、そっとスマホにロックをかけ、そして目を閉じた。


 ――これからの一年も、『廣瀬ハル』としてTwitterを楽しめますように。

 決して目にすることはできないであろう、インターネットの世界を想像しながら、そんなことを願った。

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