131/430
2020/03/10『メモ』『黒』『冷たい』
――退屈な雨上がりの午後。
私は、駅で待ち合わせをしていた。
まだかな、まだかな。
あまりに暇で、てくてくと駅前を行ったり来たりしていたら、水たまりを踏んでしまう。
「冷たっ!」
思わず叫んでしまい、周りの人に冷たい目で見られてしまった……。
濡れて黒くなった靴を眺めながら、その人を待っていた。仲良しの、文通相手を。
その人の名前は、きのいろは。
彼女には、まだ会ったことがなかった。つまり、今日初めて対面するのだ。
いろはちゃん、まだかなぁ。
……結局、一時間経っても、二時間経っても、彼女は来なかった。
仕方がないので、駅前の黒板にメモを残しておくことにする。
『きのいろはさんへ
二時間待っても来なかったので、帰ります。ごめんなさい。
日野みどりより』
数日後、彼女から手紙が届いた。
『この間は行けなくてごめん! 風邪ひいちゃって、どうしても出かけられなかったんだ……。
また一緒に会う予定立てよ!』
彼女が約束を忘れていたわけではないと分かって、少しだけほっとした。




