2020/03/07『占い』『氷河』『王国』
とある王国には、巫女が暮らす街があった。
他の誰にも利用されないように、そして力を悪用する巫女が生まれないように、人里離れた場所に、その街はあった。
巫女には知識があった。
薬草の効能に詳しく、病が流行ったときには、薬を作って街の外に届けた。
巫女には力があった。
それは、人の魂を操る力。自らの魂を身体から放ち、遠く離れた場所を見ることができた。また、魂が抜け眠り続ける身体に、魂を戻すこともできた。その力を、巫女は国のために使った。
そんなある日、一人の巫女がこう言った。
「どこかは分かりませんが、とても寒いところ、氷が海にたくさん浮かぶところにある都市から、使者が旅立っていました。『暖かいところにある街へ、港を求めて』と、人々は言っていました」
話し終わると、彼女はふらふらと倒れてしまった。あまりに遠い場所へ魂を飛ばすと、こうなってしまうのだ。
他の巫女は慌てて彼女を休ませ、その後、真剣な表情で互いの顔を見た。
――暖かいところにある街へ、港を求めて。
「……これは、もしや」
一人が呟くと、周りも頷く。
「これはきっと、遠い北国が南の国を支配し、港を横取りしようとしているのではないでしょうか」
それを伝えられた王は、考えた。
支配されないようにするには、どうしたらいいのか。この王国を、この王国のまま残していくためには。
臣下と話し合いながら、対策を立てていく。
――北国の使者がやってくるまで、あと少しだ。




