2020/02/28『騎士』『暮らし』『漫画』
この出来事のことを、もっと知ってほしい。
そんな思いで、鉛筆を手にした。
漫画なら昔から好きで描いていたし、読者もとっつきやすいかもしれない。
あ、ノンフィクションとしてではなく、ファンタジーものっぽく創るのもありだろうか。
そんなことを考えながら、キャラクターを描く。
一人の壮年とその息子が、リビングで語らっている。
「ねえ、父さん」
「なんだい?」
「昔、父さんって騎士だったよね」
一口コーヒーをすすり、壮年は頷く。
「ああ。でも、父さんはあの仕事が嫌いだったよ」
複雑な表情の父親に、息子は首をかしげる。
「そう? あの頃はとても誇らしげだったのに」
「……なんというか、確かに誇らしかったんだ、自分の国や家庭を、その暮らしを守れたことは。でもな……おれたちが得た平穏は、誰かの命を犠牲にしたものだと思うと、な」
穏やかで、でも暗い感情を帯びたその声を聞き、青年は黙り込んでしまう。
重い雰囲気に、父親は一つ咳払いをしてこう言った。
「今はこう思ってるんだ。自分の国も家庭も、その暮らしも、対話で守りたい、とね」
「それが、政治家になった理由なの?」
「ああ、そうだよ。
――そうだ。今日は久々の休みだし、お前に昔話でもしてあげようか。もっと詳しい話を聞かせてあげるよ」
壮年はそう言って、笑いかける。青年は真剣な顔で、頷いた。
鉛筆を、置いた。
プロローグは、こんな感じだろうか。
うんと伸びをして、立ち上がる。ココアでも飲んで一休みするか。




