表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/430

2020/02/18『太陽』『旅』『童話』

「どうして旅をするのかい?」

 ぼくはその人に尋ねてみた。

 その人は、もう何年も、いろいろな国を旅している。そして、ぼくはそれをずっと見守っていたんだ。

「おや、まさか貴方に声をかけられるなんて。光栄ですねぇ」

 そう言ってその人は笑ったあと、どこか遠いところを見るような目をして、こう言った。

「……わたしは、童話が欲しいんですよ。小さな子供から楽しめるような、物語がね」

「それは、どうして?」

 ぼくが聞くと、その人はにっこりと微笑む。

「わたしは幼い頃、物語に助けられたんですよ。物語は、どんなに寂しい時も、辛い時も、わたしのそばにいてくれました。そして、いつだって幸せを届けてくれたんです。それが少しばかり怖い話でも、寂しい話でも、読んだ後は心が温まるんです。本は友達だったんです。決してわたしを裏切ることがない、大切な。

 ――だから、そんな物語を、たくさん子供たちに見せてあげたい。そのために、わたしは世界中を旅して、童話を集めているんです」

「素敵だね」

 そう言うと、その人は頬を染めた。

「わたしは物語だけでなく、その材料も集めているんですよ。世界中で起こっていることを集めて、それをもとに、童話を書きたいんです。ほら」

 ぱっ、とその人が見せてくれたのは、書きかけの物語。子供たちが喜びそうな内容で、それでいて他のどの話とも似ていない、まだ誰も見たことのないもの。

「これはとても面白い。きっと、たくさんの子供たちが喜んでくれるよ」

「ありがとう、太陽さん。それでは、わたしは旅の続きを」

 旅人は再び歩き始める。

 童話を集め、自ら物語を紡ぐため。

2020/02/18 22:30

誤字があったので修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ