2020/02/16『太陽』『漫画』『揺らぎ』
ゆらゆら。空間が揺らいでいる。
「あぢーっ……」
海辺の道を歩いていく。太陽がじりじりと肌を焦がしていく。手に持っているアイスも、早く食べなければ溶けてしまうだろう。
「やっぱり暑いよね……」
隣にいる希胡も、手で顔に向かって風を送ろうとしている。が、たいして効果はないのか、だらだらと汗を流し続けている。そのうち諦めて、ハンカチを取り出した。
「ねえ、悠斗はどうするの?」
「えっ?」
「進路だよ、し、ん、ろ。ほら、まだ決まってないって言ってたじゃん」
ぼたり。アイスが溶けて、地面に染みを作った。
「あ、ああ……そういえば、そうだったな」
忘れていた。まだ俺は、行きたい高校が決まっていない。
「一緒に夜見高目指す?」
そう言ってにっこり笑う希胡に、ちょっとだけドキッとした。頬が熱くなったのは、夏の日差しのせいだ。
「む、無理だぞ夜見高なんて。この夜見月市内で、上から二番目のとこだろ? 俺の成績知ってて言ってるなら、お前相当馬鹿だぞ?」
「あはは、冗談に決まってるじゃん。悠斗の成績は知ってるからねっ」
「お、お前~っ」
笑いながら逃げていく希胡を追いかけた。アイスが溶けてしまうとか、もったいないとか、そんなことはすっかり頭から抜け落ちていた。
――中学三年生の夏。塾に向かう俺と、希胡。俺たちの目の前に続く道は、現在進行形で作り上げられている。俺たちが、作っている。
今までも、これからも、ずっと。
ずっと、私が作っている。
こうして、ペンを走らせながら、様々な絵を、物語を紡ぐ。
中学三年生の夏。塾に向かう悠斗と、希胡。彼らの目の前に続く道は、現在進行形で作り上げられている。私が、描いている。
この漫画を読むであろう少年少女たちに、楽しんでもらえたらいいな。
そんなことを願いながら、祈りながら。




