2020/02/11『青』『節制』『都市』
ご存知だろうか。この現実世界の他に、「おとぎの国」と呼ばれる世界があることを。
そして、異世界「おとぎの国」には、魔法が存在することを。
異世界「おとぎの国」の中にある王国、ヤーンは、とても大きく、豊かな国だった。
ヤーンは、建物全てが青いことから「青の都」と呼ばれていた。
この王国、青の都が豊かな理由、それは魔法が他の国よりも発展しているからだ。
他の国よりも沢山の魔法使いや賢い魔法学者が暮らし、魔法を使い研究している。どうして魔法が発展しないことがあるだろうか。
この王国の最大の強み、それは、魔法学者たちによって開発された、とある薬だった。
ヤーンの城にある研究室を覗いてみれば、分かるだろう。そこに、青い瓶がぎっしりと並んでいるのが。
この青い瓶の中身こそが、偉大なる発明品。
感情や美徳、大罪などを薬にしたものだった。
これを飲めば、実際にその感情や美徳、大罪が、飲んだ者の中から湧き上がってくる。
つまり、人の感情を、人格を操れると言っても過言ではないのだ。
それは、よく使われれば、人々を幸せにするだろう。
しかし、物事はそう簡単にはいかないのである。
ここ「現実世界」や異世界「おとぎの国」、さらには他にも存在するかもしれない異世界を、自由自在に行き来できる悪魔がいた。
悪魔はヤーンの王城にある薬に目をつけ、それらを大量に盗み出してしまった。
そして、異世界「おとぎの国」だけでなく、この「現実世界」や他の異世界に、ばら撒いたのだ。
しかも、ただ撒くのではなく、悪人や良くない占い師、他の悪魔に渡す、という手段で。
そのせいで、この薬は悪用され始めた。人を不幸にするために。
例えば、仕事の業績に悩む男に渡して、嫉妬させ、やがて狂わせたり。
……ほら、今も。
悪魔が青い瓶――それにはModerationと書かれている――を持ち、太った男を見ながらほくそ笑んでいる。
男に瓶を渡し、薬の効果に溺れさせ、逆に痩せすぎで体調を崩すように仕組むため。
作中で触れた「嫉妬してついには狂った男」も「節制の薬で痩せすぎた男」も、「宝箱のタペストリー」のどこかで触れています。気になる方は探してみてください。




