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2018/03/31 『森』『童話』『路地裏』
森の中にある広場。
私は今日もお気に入りの肩掛けカバンを持って、そこに向かう。
そこは「おはなしひろば」と呼ばれていた。
私がここに越して来たばかりの頃、友達がいない寂しさを紛らわせようとここで一人、童話を読んでいたら、それを聞いた森の動物たちや、私と5つ年の離れた小さな女の子がやってきた。
「素敵な声だねえ」
「お嬢さん、お名前は?」
「そのお話、初めて聞いたよ!なんていうお話なの?」
「おねえさん、おともだちになろうよ!」
あの時の嬉しそうなみんなの声、いまだに覚えてる。
その時から一週間に一度、私が書いた物語の読み聞かせをそこでするようになった。あの日のように。
「ねえねえ、今日はどんなお話をしてくれるの?」
あれから長い時が経った。あのころ小学校に入ったばかりだった友達は、今年から中学生になる。小学校六年生だった私はもう、今年で高校三年生だ。
「今日のお話は『路地裏の奇跡』っていうお話だよ。気に入ってもらえるといいな」