表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

第五話

「開きまへん。ウチは連れてかれへんで」

 本当はすごく怖かった。でも気丈に振る舞わないと、すぐこいつに乗っ取られるような気がした。イヅルがどうにかしてくれる。だって私は、何も知らない普通の女の子なんだから。特別な魔法で狐を退治できないし、すごいバリアが張れるわけでもない。

「麻姫、あとちょっとの辛抱や……」

 イヅルはというと、何かに悩んでいるようで、箱庭の前で何か考え事をしているようだった。

「なあ、ウチイヅルのとこ行ってええの?」

「ん? あー、まあ、あんまり動かんでほしいんが本音やけど、今は向こうもだいぶ静かになっとるし、いけるんちゃう?」

 こっちの生死に関わることを気軽に言うな。

 でも私は彼を信頼して、近寄った。ずっと正座していたから足が痺れて、いつもの5倍くらいの時間をかけて歩いた気がする。

「何を悩んどるの?」

「それが……」

 イヅルは山を指さした。頂上には鳥居があって、よく見たらお稲荷さんも添えてある。ミニチュアなら可愛いのにね。

「文献には、これを壊せば狐はいなくなるって書いてた」

 村人が押し寄せない時は、書庫に篭って何かを探していたみたいだったけど、成果がでたようでよかった。

「なんで昔の人は狐を追っ払う方法、知っとたんにせんかったんやろ」

「それなんよ」

 いい質問ですね! と言いたそうにイヅルの瞳は輝いた。こんな時に何故はしゃぐ。

「狐を追っ払えるのがほんまやとしても、ここにまだ鳥居と狐が残っとる限り、誰もせんかったってことやん。壊しても消えんかったんなら、ここに鳥居も狐もいてないやろ」

「せやな」

 その時強い風が襖に叩きつけられて、地獄の底から響くような声が、また何かを語りかけていた。

「ツライ……サミシイ…………モオヒトリハ……ヤダ…………」

 同情したら、連れていかれる。

 目が合ったイヅルは何も言わなかったけど、何となく伝わった。

「急いだ方がええ。どうするか、麻姫に任せる」

「それ、村に何かあったらウチの責任やん」

「地獄でまた会えばええやん」

 あの世でも天国でもないんかい。

 ウチが選択に失敗すれば、村は滅びてみんな地獄行き、か。


▼鳥居と狐を壊しますか

 1、壊す  (第六話へ)

2、壊さない(第七話へ)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ