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第四話

「麻姫っ! う、あ……」

イヅルが倒れる音がした。私は振り向きもせず、その美しい人の手を取る。

「待っていたよ」

「ウチも……」

「さあ、お家へ帰ろうね。僕のお嫁さん」

 私は手を引かれるまま、どこかへ連れていかれた。



【BAD END】狐の嫁入り


 白無垢を着た美しい花嫁を籠に乗せ、行列は進む。今日は狐の結婚式。山の神々や動物たちは、盛大な宴を開こうと集まっていた。一目美しい花嫁を見てみたいと、天狗まではるばる遊びに来る始末で、山は珍しく活気づいていた。

「本日は僕とマキのため、大勢集まってくれてありがとう。ご馳走を用意しているから、みんなくつろいでいってくれ。今宵は無礼講だ!」

 狐の音頭で彼らは乾杯をし、採れたての栗や野イチゴを喜んで食べた。しかし花嫁は、無表情のまま狐の隣に座っているだけだ。

「君も食べるといい。なに、そのうち味覚も僕たちと同じになる」

 狐は酒の入った御猪口を花嫁に握らせ、人形遊びをするように花嫁の口内へ酒を注いだ。

「君がきっと本物のアサヒメだ。さあ、舞って見せてくれ。昔みたいに。僕は千年君にまた会うのを待っていたんだから」

 花嫁は目を閉じて、狐にもたれかかってしまいました。眠ったようにも見えます。客たちは二人のことなど見向きもせず、騒ぎ続けていました。

「ここにいるはずなんだ、アサヒメ……マキの生まれ変わりが。人間の彼女が、僕に唯一残したものなんだ……必ず見つける……また君を愛してみせるよ」

 狐が花嫁の小さな額に口づけをすると、花嫁の頬は薄桃色を取り戻し、再び瞼を持ち上げました。

「やあ、アサヒメ。おはよう」

 狐は花嫁を手を取り、口づけました。狐は本当にアサヒメを愛していたので、慈しむように花嫁を撫で、覚醒の時を待ち続けます。

 可哀そうなことに、今回のアサヒメも完全な魂を取り戻すことはできず、狐はまた次の「マキ」を探すのです。

 その運命を知っていた花嫁は、狐の腕に抱かれながら、しとしとと、何も映さない瞳を涙に濡らすのでした。


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