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長野県の奥地で、ラスト

「いやー、迷惑な話ですよね」

いつもなら、誰も居ない時間帯に、皆いつものように仕事をしていた

今の仕事場所は、若者が、降り場に一人いるいがいは、見なしたの乗り場に、誰も居ない客を待って、延々と20分交代を、繰り返している

それもこれも

「まあ、いつもの思いつきだから仕方がないよ」

主任が、昆布茶を飲みながら、そんなことを言っている

「しかし、誰も来ませんね」

そう言って、バイトは、時計を見るともうじき新年になろうとしている

「そろそろ電話してやるか」

老人はそう言うと、灰色の電話を、取る

「まあ、雪が大量にあれば、良いけど、この暖冬だと、ただでさえ、雪質が、悪いしな・・・本当なんで、年越しスキーなんて考えたんだろ」

と、お茶をすすりながら、社長の愚痴を言った主任

「それじゃあ、後はお願いします」

老人はそう言うと、暗い外に出ていった

「暗いですね」

ホシカワが、暗いリフト乗り場を見ていった

「・・まあ、夜だし」

主任は、お弁当を食べながら、誰も居ない乗り場に目を走らせている

普段であれば、バイト一人に、監視を任せたりしないが、誰も居ないのに

見る必要性はあまりなかった

「雪降りますかね」

ホシカワが、そう言ったそのとき

いきなり、暗くなった

其れは、あまりに突然のことで、目を自分がいつまでも閉じているのかも知れない、そんな考えもよぎるが、実際は、停電だと気づくのも、そう遅くないことである

「停電かな」

主任がぽつりと言った

「大丈夫ですか」

バイトは、暗闇の中でそう言う

その中では、唯一ヒーターのみが、青と赤の炎を、揺らげ、わずかな明かりを、机下から照らしている

「・・ちょっと外を見てくる」

主任はそう言うと、あらためて居おいてあったのであろう、汚いずだ袋のようなリュックを背負う、そこに黒い文字で、「緊急」と、わずかな明かりで読めるが、すぐに闇の中に消えていった

その後には、リュックの中に入っていたであろうライトの白い明かりが、見えるだけである

外を見るための窓から見える物はなく、わずかに、雪がちらつき始めているのが、窓ガラスに、ひっついているところから、推測できる

一人、バイトは、怯えていた其れが、吹き抜けた、風のうねりか、または何者かによる叫びか、遠くでそんな音が聞こえた気がしたからだ


主任は一人、スノーモービルで、谷の横に出来たゲレンデを、走りながら

かすかな星明かりが雲の切れ間から写すリフトの座席を見るのであるが

今のところ、変わったところは見つからなかった、しばらくはしらせると

雪がいつの間にか強くなっており、もう、座席すら見ることが出来なくなっており、モービルのライトが、急な斜面に出来た詰め所を、照らしていた、中を、探してみたが、誰も居らず若者の姿も老人の姿もない

そこで、近くにある発電器を、見ることにした、出るとき、軽く下の電気室を見たのであるが、見事に壊されているというか破壊されており

もうもうと煙と何かが燃えるいやなにおいがした

近くにあった消火器で、消火するも、使い物にならないのは、明らかであった、そのため、上にある、もう一つの電源、これは、緊急時に、備えて

まだ金があった頃に、作られた予備電源だ、其れを、前の主任に聞かされていりいちおうの知識としてあったのだ

幸いなことに、油や錆でべとついた、扉の奥には、エンジンがあり

其れを起動させると、怪物のような、低いうなり声をあげ、確かに何かが動いた音がした、すぐに、暗い地下室の明かりがつく

その明かりを頼りに外に出ると、ゲレンデを照らすライトが、下まで、道のように、明るくなっていた

しかし、そこで妙な物を見た

吹雪で、雪をかぶっているゲレンデに、一つのシュプールと自分が乗ってきたモービルのあとを見た、どういうことだろうか、雪が降り出してから

お客は来ていないはずであるが・・・上で降りて、しばらく滑らなかった

もしくは、若者もしくは、老人が


モービルで、下まで降ったが、相変わらず、雪は強くなるばかりであり

ゲレンデを知っていなかったら、遭難してたにに真っ逆さまになってもおかしくはなかった、それでも、明るい乗り場の建物の周辺を、走っていたとき、白樺の横に、赤い物を見つけた、其れが何かわからなかったが

何かの手がかりになるかも知れないと、その木によりかかっている何かを

モービルを降りて確かめようとした、しかし、近づくにつれて、其れが人の姿であり、その髭面に見覚えがあることに気が付いた

其れは、老人であった

「何があったんですか」

その姿に近づいて、主任は目を、みひきらいた

それは、主に腹部が赤く、関係者が着る青と緑の制服代わりのジャンバーを、汚している、しかし、いよいよめをこらすと、其れが体内より出ていること、体のあちこちに、傷があること、腹から何か湯気を伴う肉が出ていることに気が付いた、其れが生きている人間にはふさわしくないものであり顔色から、ある程度死を見た気がした、それでも、首筋に、手を当てる、額から流れた、どろりとした物が手に着いた、其れは冷たく、数分前まで生きていた物にはとうてい思えない

「・・・殺人鬼」

主任はそうつぶやいた

そう言えば、あのシュプール・・この近くまで付いていた、いや、ここまで、この目の前まで、あったのだ・・・

主任は、あたりを伺う、しかし、闇に、殺人鬼の姿を見ることは出来なかった、自分の妻が言っていた話を思い出す

全身を切り刻む、残忍で、奇っ怪で、狂気的な殺害方法

一人だけを狙った狡猾な手段・・まさか

モービルに括り付けてあった、カバーに、老人を包み

その場から引き離すことにした

点々の血がこぼれる、しかしそんなことは気にしてはいられない

そのまま、明かりをたたえた、乗り場にモービルを走らせるのであった


主任が、乗り場にはいったとき、扉が完全に閉められていた

其れを開けて、室内にはいると、明かりはついているが、誰も居ない

つまり、出るときは居たはずのバイトが居ないのだ

すぐに、あたりを見渡すと、ある物がないことに気が付いた

其れは、皆が邪魔だと言っている、バイトのスキーバッグである

あの縦長の袋と共に、バイトが消えていた

そう言えば、扉が閉め切られていた

其れはつまり、いつものように、扉を完全に閉めて外に出たということだろう

・・・大丈夫だろうか

部屋には、引きずってきた老人が、モービルの袋の中にいる

「・・・ここに、一人か」

外では、風の音が強い、本来であれば、本部に、連絡をすべき所であろうが、本部につながる電話線ごと電気ケーブルが、壊されたせいだろうか

一切繋がらなかった

ただ、誰も乗ることもなく、回り続けるリフトから、降りる者は、結局だれも居なかった、ただ、妙に感覚が合いているような気がした

これはどういうことだろうか

外は、今まで見たことがないような、風が吹き、雪が、視界をシャットダウンしている

今中にいて、外を見ているから良いものであるが、この山頂付近は、酷く冷える昼間でも、マイナス8℃なんて、ざらにある、増しては、夜でありさらにはこれだけ吹雪くと、息が出来ない有様になる

「どうする」

主任はそうつぶやいた

どこからか誰かが見ている気がする

そんな者は居ないだろうと、思おうとしても、赤い水たまりを作っている

袋が目に付く

確かにいるんだよな

其れは、事故なんてものじゃなかった、明らかに、何者かによって殺されている殺意

老人は、リフトから離れた場所にいた、これはどういうことだろうか

たしかに老人がリフトに乗ったのを、自分とバイトが見ていたのを主任は覚えている、しかし、老人がいた場所は、乗り場から少し離れた場所であった・・・何故だ

主任はもう一度、窓を見たが、相変わらず、白しか見えない

軽く窓を開けたが、肌を突き刺すような、風と雪が、窓から吹き込む

急いで閉めた手は、感覚がほとんど残っていなかった

「・・・これは、罰なのだろうか」

独り言のように、つぶやく主任

「・・・そうだ、老人の荷物の中に、何か意味のあるものがあるかもしれない」

主任は、プライバシーを無視して、老人のリュックサックを開けた

そこには、プラスドライバーや、水筒、弁当などに混じって、後ろに収納出来る場所に、今まで見たことのない物を見つけた

それは、使い古されていて、革のような表面に傷がいくつもある本であった

中を開いて、息をのむ主任

そこには、老人の文字で「殺す」

の文字

そして、それが、文字の中の一部だと言うことに気が付いた

「月殺人計画」

そこには、老人の娘が、若者に無惨に捨てられたこと

そのことで自殺したことが詳細に記録されており

それがわかった頃、若者がここにつとめることがわかり、殺す計画を立て始めた動機が、序章として書かれており、後は、行くとおり物殺人計画があり、その中に、赤い丸が付けられた章があった

そこには

「リフト落下殺人計画」と、記されていた

「まさか」

主任はそのとき、一つだけ、座席が来るのが遅かったことに気が付いた

まさか

「月の気性は荒く、そして臆病だ、きっと、暗闇のなかリフトが停まれば、酷くあわて、座席を揺らすだろう、そのとき、谷フォーの座席は、はずれやすいことから、月は、落下するだろう、幸い、谷は深く、座席が落下せずとも、恐怖のため、下に落ちる可能性もあり、リフトを止める方法は、時限爆弾を設置、これにより、月が、下に降りることを、見計らい

爆破する」

その、酷く冷静であり、刻むような文字は、狂気とも、平穏ともとれた

しかし、決して、冷静だけではないことが、文中に出てくる

「殺す」の文字が、ふかくかみに残っていることから、その感情が、染み出ているかのようであった

しかし・・主任は思った、どうして、老人は死んだのであろう

それも、いるはずのない、下の乗り場付近で

主任は、ノートをめくった

しかしそのことについて詳細はない

「・・殺されたのは、もしかすると、殺人鬼かもしれないが、どうだろう

老人が、下にいた理由・・」

もしかして、そこで、主任は、老人がメカに、あまり強くないのをお思いだしていた、リフトの異常も、電気系統になると、いよいよ困ったというのが口癖である・・・作れなかったのであろうか

「そうか、ここには、時限装置と書かれてはいるが、作ることが出来ず、自分で火を・・・それじゃあ、ここから上に行くと見せかけるのは・・・無理ではないはずだ、リフトが見えなくなったのを見計らって、下に落ちれば、事は済む、そして、爆破した、ここで老人の殺害計画は終わっていたんだ、しかし、それで終わらなかった、老人は、爆破が終わった直後

殺された、それも無惨な方法で・・・」

主任はそう言ったが、その回答に答える物は居ない

「・・・穴黒が、居たら何と言うだろうか」

そう言って、どこか遠くを見るような目をした

「・・そうだ、元はと言えば、あいつのせいだ、あいつがあんなこと言わなければ」

主任は、ぽつりぽつりと、詰め所の中で話し出す

「あいつと俺はよく似ていた、それもそうだ、一卵性双生児なのだからな

でも、あいつは、荒くれていった、俺は一流の大学に入り、そこで妻と合いここに引っ越してきた、それから十年たっても、奴は決まった職にも就かず遊びほうけてきた

だから、俺の目の届くところならと、ここを紹介した

いつも、怒鳴る老人を、馬鹿にすると言って、入れ替わったりもした

そうだ、それが絶対的に駄目だったのだ

やつは、俺の格好のまま、俺の家に行き

妻を、妻を」

主任の嗚咽が聞こえた

床を強くけっ飛ばす

その地団駄が、詰め所を揺らした

「気が付いたら、俺は奴を殺していた

おれは、おれは

妻は、気が病んでしまった

もう、俺には」

そのとき、吹雪に混じり、何かの音がした

それが、外の音が、大きくなるのと同時に、扉が開いたとわかったそのとき、主任のよどんだ目に映った物は、最近よく見る外人であった

その真っ赤なジャンパーが、模様でないことに、気が付いたとき

その手に、握られた、白と赤の混じったナイフがいつの間にか、主任の手を切り裂いていた

それはとっさのことで、本当は、喉笛を、引き裂こうとした一撃必殺の

攻撃であった、しかし、それを、反射的に手が、阻止したのだ

しかし、そこまでである、次々に繰り出される、ナイフの刃が、次々に、主任を引き裂いていった

そして、腕が動かなくなり、目が切れ見えなくなった頃

主任の胸に、白いナイフが一瞬突き刺さり、すぐに引き裂かれた

倒れた主任は、少し、動いたが、後は、ただ、わずかな痙攣を残して

老人のように、血を流す物体となっていた

「ふふっふふふ」

それは、無表情から出る、ため息のようなものだろうか

目は笑っているのに、体は、まるで平然と、朝食を食べているかのような

落ち着いた動きに見えた、ナイフをもつてだけが、異様に、動き、異質に喜びを感じているように見える

「全く難儀でしたよ、狙っていた、若者は、時間より早く下に降るし

電気は止まるし・・でも、老人を殺せたから・・それと」

そう言って、血の滴るナイフの下の長身を見つめた


「ウヲーアーゾオオオン」

そのとき、またしても音が響いた

それが何かわからなかったが、ロズウェルは、すぐにそれがやばいものだと感じた、次の瞬間、窓ガラスが一気に割れた

それは黒い影、その固まりが、いきなり、ロズウェルごと、壁にたたきつけた

その手に持った、ナイフは、その巨大な何かに、向かって突き立てていたが、その巨大なタックルに、その手は、押し折られていた

「うぅ」

外人のうめき

しかし、それも残像のようなものであった

巨大な、羆が、その手の爪で、体を引き裂き、牙を、腹にあて、引きちぎる

腹の皮は、鍛えているにも関わらず、あっさりと引きちぎられ、抵抗する力は、すぐに無抵抗な物へと変更されている

「ウォーーアアーーーオーー」

それは勝利の雄叫びだろうか

幾度と無く叫ぶ、熊の声が、狭い詰め所に響いた

血にむせかえる室内を、熊は、三体の肉片を、軽くちぎっては、食べ、しばらくしてまたたべるを繰り返していた

その間、ヒーターの火をおそれることはなく

ただ、割られた窓から、寒い空気が流れ込んできたが

そんなことを、かんした様子はない


私は、出るに出れなかった

恐怖から、咄嗟にトイレに入ってしまったが

そのまま、トイレから出ていない

つい一緒に持ってきた、ライフルが入った、スキーバッグが、トイレの大半を占拠している

そう、このスキーバッグは、ライフルの隠れ蓑なのだ

本来持ち出すわけには行かないが、従来臆病な私は、どうしても、他人より優位な状況でないと、生きていけないほどだった、だから、銃を求めた

そして、この場所にも、スキーバッグだと言って、持ち出していた

でも、今の状況は何だ

停電、老人が殺された、主任も、そして殺人鬼までもが

意味が分からない

ただ一つわかっていることがある、

奴は私の存在にいずれ気づく

いや、もう気が付いている

ただ、まだ餌が近くにあるから私を、まだおそわない

しかしそれも時間の問題だ

飽きたら次は、私だ、私

私は、バッグを開けた

扉に、体当たりをする振動が聞こえた

私は幾度と無く練習した動作を、繰り返す

それは、まるで、予定調和だった

僅かに、あいた突進の時間を使い

外側に開くトイレの扉を

開き、入り口の横にずれた

その巨体は、天井に、顔が擦られており、目は、黒く、何も見ていないとも取れた

穴無し

ホシカワの心に、そんな言葉が浮かんだ

食料の足りない雄の羆の中には、穴にこもることなく、餌をもとめさまようことがあり、そう言う熊は、非常に獰猛になると

熊と目があった

その時

銃声が、響く

その弾痕は、まっすぐ、熊の眉間に、打ち込まれており

熊は一瞬揺らぐ、しかし、そのまま、倒れることなく、熊は、女に、向かった、しかし、ホシカワのはなった銃弾が、今度は、熊の中心

心臓に穴をあける

ゆらりと、巨大が揺れ、床に倒れる

下は、ほとんど倒れた物が、引き積められた状態となっていた

かすかな、火薬のにおいと血のにおいが部屋の中に充満していた

その時、外で、雷鳴が轟き、先ほどまでよりも強い風が、建物を揺らす

それはまるで嵐のようであった

一人、ホシカワは、銃を握りしめていた

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