索道係は、人命の安全を優先なければならない
①索道係は、人命の安全を優先なければならない
索道係は①に、反しない限り、接客しなければならない
索道係は、①と同様に、自分のみを守らなければならない
長野県の奥地、群馬との県境に面した山奥にある、野沢村に、八月上旬
直径30センチの隕石と思われる物体が墜落、雨が長らく降らなかったのが、原因と見られているが、火災が発生、スキー場
付近の山を、丸裸にしてしまう、大災害となった、幸い、死傷者は居らず
数人が軽いやけどですんだのは奇跡的といえよう、この最大の勝因となったのは、近年頻発する大災害に備え、県が導入した、大規模な、ヘリを使った、消火活動による物であるという、なお、隕石は、野沢スキー博物館に、保管されており、九月より一般公開されている 北信野新聞社より抜粋 2031号 十月 九日 土曜日
登場人物名簿
原舎浜主任であり、川フォーのリフト係の責任者
温厚な性格であり、背が高い
影石 (カゲイシ)四十年以上、野沢スキー場で、リフト係をしているベテラン、少々口が悪く、背の低い白く立派なヒゲ顔
月 (ツキ)チャラい若者、普段からその言動は、遊び人であり、老人と仲が悪い金髪
穴黒 (アナグラ)職業不定に見える、風来坊のような男
いつも主任と言い争っている、背が高くがたいが良い
干川 (ホシカワ)アルバイト いつもドジをして、皆から怒られている
気が小さく、場違いなことばかりしている 大学生風の女性
「お前、何どいったら気が済むんだ」
老人が、立派なヒゲを振るわせて、外で、客の誘導をして帰ってきたところを、怒られている、老人は、指を指して、二つある扉の一つをさして叫ぶ
「その扉を閉めたら、外に出るに出れないじゃないか」
ガラスの扉は、ぴったりと閉められている
「だっだって」
「だってじゃない」
さらに老人は怒鳴った
「とにかく覚えろ、何どめだ」
老人はそういうと、睨んで、干川の前から立ち去る
ホシカワはといえば、其れを、ビクリとした様子で見ていた
ここは、野沢スキー場の川フォーのリフト乗り場
降り場に一人 乗り場に、四人体制で、張っている
どちらも、ガラス張りの場所であり、下のみ、常に、一人外で、客の誘導をしている
そして中では、常に、客が、安全に乗れるように、見張っているわけである
今老人が言ったことは、緊急停止をしたとき、其れをまた動かす装置が、外にあるため、そのとき、わずかに扉が開いていないと、外に出にくいことを言っているのだ、初日、ホシカワは、上の降り場に居たのであるが
ついクセで、窓が開いているのに気が付き、閉めたが故に、こっぴどく怒られる経緯があった
「お昼にしろ」
突っ立っていた、彼女に、老人が、言った
「はっはい」
彼女はそういうと、壁に掛けられた、鞄から、お弁当を取り出そうとして
何もないところでこけて、注目を浴びるも、誰も何も言わない
これは、冷たいとかどうこうよりも、この場所では、余り挨拶という行為がない
「気にすること無いっすよ」
いきなり、トイレから出てきた、若者がそう言った
「・・はい」
自分よりもとししたそうな若者に、ホシカワは、敬語で言った
「お前は何時間トイレに入っているつもりだ、そんなことしている暇があったら、主任の行動を見ていろ、もう、客を目で追うのも馴れただろう
他の人の事を見てまねをしろ」
「はいはい」
「・・早く座れ」
外では主任が、見事な客さばきで、箒で粉雪を掃き、客の居ない間に、レッドラインの掃除、道の凹凸を、削ったり、捨てたり、埋めたりしていた
その間にも
「ほれいまの見ろ、見なかったのか」と言う、老人の声が、お菓子を食べる、若者の音が響く、室内に、響いていた
部屋の電話が鳴った、若者が、お菓子を飲み込み取ると
「スライド八十です」と、渋い男の低い声が聞こえる
「はい」
若者はそう言うと、電話を切った
そのまま、目の前に「熊沢解禁 ストック落とし物あり」など書かれているメモ帳に、「80」と書き込んだ
その後、すぐに、外の客の足下にしせんを集中しているようだが、端から見るととても集中しているようには見えなかったが、少なくとも、干川よりは、ミスは少ない
「おいおい、言わなきゃ伝わらないだろ」老人が、若者に言った
「あ・・スライド八十です」若者は、にへらとそう言うと
また視線を戻すのであった
「お疲れさまでした」
言う物言わない物は居たが、リフト降り場で、みなくち口にそう言った
リフトは、今は停止しており、座る部分が、皆持ち上げられ背もたれに
密着している、建物内の入り口はどちらも閉められており雪が、吹き込めないようになっていた
今日もようやく終わった、そう皆が心のどこかで思っていたとき
今年から働き始めている穴黒と言う男が、言った
「俺もうきょうでここ辞めます」
其れは重大時に思えた、ただでさえ人数不足で休みを減らされているというのに、男が辞めたらどうなるのであろう
「・・何故だ」
主任が男に言った
「・・夢を見るんです」
「・・」
主任は黙って聞いている
老人も、何か言いたそうだったが、主任を習って黙る
「毎日毎日、働き出した頃から、監視で失敗する夢を、そのたびに人を殺すんです、もう無理です」
「もう駄目なのか」
主任は言った
「はい、もう決めましたので」
その日、四人だった固定メンバーが一人抜けた
代わりに、緊急員が、日替わりで来るようになったのであるが、其れはまるで、男の夢が現実になるように、皆ミスを連発し始めたのだ
其れは、主任に始まり、ベテランの老人バイトは、何時にもましてミスを連発していた、若者だけが、唯一、いつもと変わらなかったと言えた
「そう言えば、殺人鬼の方はどうなったんでしたっけ」
若者が、煎餅をかじりながらそう言った
今監視は、主任でその隣で、若者が座り、老人は、主任が、作ったカレーを、汁に、お弁当を食べている
「ああ、体中ひっきられて殺されているとか言う奴だろ、カメラとかは来ているのをみたと言うが、犯人をみたという奴は、今のところ居ないらしいが」
「・・・熊だなんて言う奴もいるでしょ」
主任が言った
「熊ですか」若者が、後ろを振り向かず言う
「・・しかし主任、誰も犯人を見ていないと言いますし」と老人が
子供が来たので、乗りやすいように、減速スイッチを、二度回しながら言った
「・・そう言えば、バイトの干川さんなんて怪しいでしょ」
若者が言う
「・・・どこがだ」と、老人
「・・いや、おどおどしている、ああ言うのが危ないんですよ」
「・・お前はまた」老人がそう言ってためいきを付いた
しかし、主任が口を開く
「そう言えば、ここにくる前は、何かすごいことをしていたらしい」
「すごいこと」若者が言った
「ああ・・詳しくはしらないが、事務所がそんなことを言っていた」
「・・まあ、いつも、ゴンドラを使わずに、下にスキーで、降りる奴だからな、あの袋がじゃまで仕方がない」
そう言って、派手な蛍光カラーの縦180センチはありそうなスキーの袋をみた
「良いじゃないですか、彼女そのために来ているようなものですよ」
「・・・」
「そう言えば」
「何だ、仕事に集中しろ」老人が怒鳴る
「けさ、ゴンドラが一緒だったんですが、彼女から温泉のにおいがしました、朝風呂でしょうか」
「・・・どうでも良いだろ変態」と老人
「どこがですか、其れより、彼女何をしていたんでしょう・・もしかして、水商売とか」
「・・無理だろ、鈍くさいし」主任がそう言って、外を見ると
座席の後ろから子供を持ち上げて、いざ戻ろうとして、後ろから来たスキーヤーのスキーを踏んですっころんで居る彼女の姿が、あった
「停止停止」
老人が叫ぶ
彼女を見て、騒いだ子供が落ちたのに、主任が気づいていなかったのだ
「あっ」
主任が押したのは、どうやら減速の方だったらしく
その頃、降り場の緊急員が、降りるのに失敗した客を、戻すために
本物の停止ボタンを押すことになる
「いやー、フレンドリーですよね」
ホシカワが、弁当を食べながら言う
「何が」
若者が、人数カウンターを、押しながら言った
「いきなり外人さんに、ハロー、とか、自分をさして「ロズウェル」とか
一瞬何言っているのかパニクっちゃいます」
「なるよねー、わかるわかる」
若者が相づちを打つ
「それにしてもほとんど外人さんばかりですよね」
「まあ、ここは外人の村と化すからね」
「どこから来ているんでしょう」
「まあ、オーストラリアが多いんじゃないかな」
「へえー」
「いま、あっちは、なつ休みみたいなもんだし、しかも二ヶ月くらい」
「・・いいですねー」
「あっ、ここまで押しましたから、後お願いします」
若者がそう言って、老人に、人数カウンターを、渡した、そのとき
「しっかり見ていろ」
老人がそう言って、前を指さした、そのとき、座席に座った女が
引きずられていた
其れは、何の前触れもなく、落ちたような気がしたが、そんなことはこのさいどうでもよかった、すぐに、停止ボタンと、彼女が言う
老人は、そのときになりようやく気が付き、若者に変わりボタンをおした
「見てきます」
そう言うなり、若者は消えており、外に向かっていた
女性を、抱え起こそうとすると、いきなり、女性が叫ぶ
「こんなの知らないわよ、何でもっと早く」
女は、自分でこけたにも関わらず、わめき散らし、ついには、若者に、ひらてうちを食らわせていた
「・・・大丈夫でしょうか」
「・・・ちょっとおかしいな」
本来であれば、止める係り監視役の老人を、怒るのが普通であろうが、しかし、中にいるので、係員に言うのは、そこまでは、あることであるが、平手打ちを食らわすほど怒るものだろうか
「何がおかしいんですか」
「・・・」
老人は、そのまま、リフトに乗らず、出ていった、女性を見ながら、外に出た
停止した場合、外にある再起動させる機械を押しに、外にはしっていた
ただ、ホシカワのみが、一人心細く、監視席に座るのみである