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黒羅刹の刑事  作者: ますむ君
捜査五課
5/6

05. 標的

  ▼▼ 10 ▼▼


 「ただいまー......」


 綺花はいつものように疲れた様子で帰宅した。

 彼女の家は立派な二階建ての一軒家である。

 

 「.......あれ? 今日は誠吾さん仕事だっけ?」


 彼女は家の中に誰もいない事に気付いた。

 いつもなら、綺花が帰ってくれば直ぐに顔出してくれるのだが、今日はどうやらいないようだった。


 誠吾さん。


 綺花には両親がいない。だから誠吾さんこと、倉石誠吾は彼女の親代わりなのだ。

 倉石誠吾は、綺花の父親とは旧知の仲だった。だから彼女を預かっている。


 そういう事になっている。


 まぁ、そういうことで、現在綺花は倉石誠吾と二人で暮らしているのだ。


 綺花はリビングのテーブルに書き置きを見つけた。

 勿論、誠吾さんからである。


 「急に仕事に呼ばれたので、10時くらいまで帰れません。カレー作ってあるので、先に食べちゃってください」


 とのこと。

 

 綺花としては、誠吾さんは自分の愚痴を聞いてくれたり、いろいろと相談に乗ってくれたりと、まさに父親そのものなので、やっぱり一緒にご飯を食べていないと寂しいのだ。

 

 一人でいると寂しい。不安だ。


 「はぁ......」


 彼女は一つため息を吐いて、カレーを温めるため、キッチンへ向かう。

 そういえば、元川はあれからどうなったのだろうか。

 

 元川が綺花のストレスの原因の一つだったのは確かなので、別にいなくなったとしてもなんとも思わないのだが。

 まぁ、明日か明後日には復活しているだろう。


 「えーと、三分三分」


 電子レンジではなく、IHコンロのタイマーをセット。カレーを温める。

 ご飯はもう炊けていたので、誠吾さんが炊いておいてくれたのだろう。


 適当にテレビを点ける。

 たいして面白くない、ただ馬鹿が罵り合いをしているだけのつまらないバラエティー番組がやっていた。

 チャンネルを変える。

 

 「......、」


 こっちも面白くない。

 チャンネルを変える。


 「......、」


 チャンネルを変える。


 「......」


 残念ながら、この時間帯は同じようなものしかやっていないようだった。

 

 そういえば、クラスの女子たちがこの番組がすごく面白いと嬉々と話していた気がする、と思い返す。

 ということは、この番組が別につまらない訳ではなく、自分の感性が歪んでいるのか? と綺花は首を傾げた。


 三分経った。

 ご飯とカレーを皿に盛り、一人でいたただきますをする。


 「......、」


 おいしい。これでも綺花はカレーが好きだ。誠吾さんが作ったカレーならなおさらである。

 いつも仕事で忙しいのにも関わらず、自分のことまで考えてくれている誠吾さんには感謝しないと、といつも思う。


 綺花は基本的にバラエティーやドラマといった、テレビ番組は嗜まない、今時珍しい女子高生だ。

 彼女はどちらかというと、ネットサーフィンをするのが好きなタイプの人間なのだ。


とりわけ彼女が頻繁にアクセスするウェブサイトはというと、あるチャットルームである。

今時、チャットルームなど流行らないモノだろうが、彼女や一部の人間はこれをいまだに好んでいたりするのだ。


「誰もいない......か」


ただ、やはり欠点があるとすれば、無料通話アプリや、メッセージアプリと違って相手と自分が同時にチャットルームにいなければ会話ができないということか。

だがそれは、それこそメッセージアプリでやれば良いことだろう。


それに、チャットルームで会話する相手は、綺花の知らない、ネットの向こう側の人間だ。年齢はおろか、性別すら不確定の、知っているが知らない人間。

そういう人たちと喋っている方がよっぽど自由で楽しい。

勿論、真奈美と喋るのも十分に楽しいが、やはり相手が真奈美でも、相手と顔を合わせて会話すればどうしても気を使ってしまうのだ。


 「しゃーない。先に宿題しとくかねー」


 大量に出された数学の課題をさっさと済まそうと机に向かう。勉強は好きでも嫌いでもない。

 と、そこで、綺花のスマートフォンがピロリン、と電子音を鳴らした。

 チャットルームの入室を知らせるサインである。


 「おっ、暇人が来たわね......」


 一度手を止めて、挨拶の書き込みをする。まぁ、ここからずるずるとどうでもいい話をし続けて、結局課題が進まないという展開になるのはわかりきっているのだが。


   ▽▽ チャットルーム ▽▽


 アヤ 「こんばんわー」

 

 不行 「ばんわーっす」


 不行 「あれ、今日はまだ早かったか? 誰もいないな」


 アヤ 「いや、私いるんだけど......」


 不行 「何を言うか。二人でチャットなんざしても面白くねぇじゃねぇかよ」


 アヤ 「......」


 不行 「あ、いや別にアヤさんが面白くないって言ってる訳じゃないからね?」


 アヤ 「......」


 不行 「あー、怒っちゃった? ゴメンって」


 アヤ 「いや別にいいんだけど。面白くないのは確かだし」


 不行 「いえホント気にしないでください......」


 アヤ 「......」


 不行 「うう......話題を変えましょうや」


 アヤ 「?」


 不行 「んー、そういえば、『アンダーブラッド』はどうなってんのかねぇ」


 アヤ 「次の処刑対象はクローン人間なのよね。馬鹿馬鹿しい」


 不行 「えー? 意外に近くにいるかもだぜ? クローン人間」


   神様 が入室しました。


 神様 「こんばんわでぇす!!」


 アヤ 「いい加減HN変えたらどうですか?」


 不行 「てか変えろよ」


 神様 「二人揃って私を虐めるなんて酷い!! Mに目覚めてしまうではありませんかーッ!!!」


 不行 「酷いのはあんたの性格と言動だ!」


 神様 「神様虐めは置いといて......なんですか、『アンダーブラッド』の話ですか!? 最近話題ですよねー」


 アヤ 「そうですよね。所謂、『裏』世界の組織って話だけど」


 神様 「『裏』世界......良いですね! 響きが!!」


 不行 「あ、神様は中二病だったのか」


 アヤ 「なるほど。なら神様ってHNも納得がいくわ」


 神様 「だーかーらー! 私の中二病は置いといて、『アンダーブラッド』の話をしましょう!」


 アヤ 「どうぞ、恒例の一人喋り始めちゃって」


 神様 「今日はえらく冷たくないですかね!? まぁいいんですけど。だって私はMだからー!!」


 不行 「ウゼェ......」


 神様 「ともあれ、『アンダーブラッド』の新情報ですけど、彼らは次々に『悪人』たちを処刑している訳ですよねー。それも捜査五課の手をくぐり抜けて」


 不行 「マジで何やってんだ、警察は」


 アヤ 「不行、神様(笑)の一人語り(笑)に口挟んじゃだめだよ」


 神様 「ええ、それで、捜査五課というのは超常犯罪を取り締まるエリート集団なのですよ?」


 不行 「それが? 単に『アンダーブラッド』がそれを上回ってるだけじゃないのか?」


 神様 「いえ、それは通常ありないことですよ? 捜査五課はその全員が規格外のチート『超常使い』ですからね。それこそ『空間歪曲』レベルの」


 アヤ 「『空間歪曲』.......、それは確かにヤバいわね。そんなやつらがゴロゴロいるってことでしょ?」

 

 神様 「イエス、マム。それ以上の化け物もいるかもですわよ? だからどんな手を使っても勝てる訳がないのです」


 不行 「でも現実は、何人か殺されてる訳だし......」


 神様 「だから私は『アンダーブラッド』の鍵はそこにあると思うんですよね」


 神様 「メディアではあれほど大々的に取り上げられ、世間でも『正義の権化』なんて馬鹿げたアダ名を付けられている『アンダーブラッド』。ですがどうでしょう? 一回でも、彼らの姿を見たことはありますか? 勿論、ネット上で」


 不行 「ない、けど。だからってなんなんだ?」


 神様 「いえ、だからそこが鍵なんですって!」


 不行 「だから意味わかんねぇよ......」


   神様 が退室しました。


 アヤ 「え、」


 不行 「なんだよ、意味深なこと言ってると思えば逃げやがった......」


 アヤ 「あんだけ格好つけといて、実は自作設定でしたー、なんてオチじゃないわよね......」


 不行 「でも、言わんとしてることはわかるような気がする」


 アヤ 「?」


 不行 「だからようは、そもそも『アンダーブラッド』なんて、いなかったんじゃないかって」


 アヤ 「犯行予告があるわよ」


 不行 「ああ、だからそれは後付けだろ。最初の方はそんな物なかったんじゃないか?」


 アヤ 「んー、よくわかんないんだけど」


 不行 「ま、俺もよくわかんねぇよ」


 不行 「どうせ、遠くで起きてることなんだし」


 不行 「そのうち警察が片付けてくれるだろ」

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