穴の底
アキの武器の恐ろしい性能に驚きやがってください
大穴
ここに博士がいるらしい
何でこんなとこにいるんだか
見ると大穴の周りには何かが蠢いている。その数50と言ったところだろうか。あの本能的に嫌悪感を覚えるようなカサカサした動き
あれはゴキブリだ
だがおかしい。大きさが50cmくらいあるのだ
自分たちの後ろも見まわすと、これまたでかいコオロギやバッタやらに囲まれていた。なんか早速ヤバい状況のようだ
人が近づけないというのはこういうことか。おそらくこいつらはただデカいだけじゃなくて普通の攻撃手段では殺せないのだろう。つまり普通の銃とかが効かないんじゃないだろうか
出来れば戦いたくないな。キモイし
「話し合いで解決できないかな?こいつら」
「無理でしょうね。というか先輩は虫に言葉が通じるとか思ってるんですか?」
「でかいからいけるかと」
皆から呆れたような目で見られた
アキと晃が臨戦態勢に入り
アキは右手に小ぶりの両刃刀を構える。それはグラディウスを縦に半分にし、中央に四角柱の機械を取り付けたような形をしていた。よく見ると左手には手のひらサイズの盾も持っていた
死刀・グラディウスだそうだ見た目ナイフだが
晃もアサルトライフルを構える
いつも軍服を着ているのも納得できるほど堂に入った構え方だ
もし実は軍人でしたとか言われても信じてしまいそうだ
キキは全身の毛としっぽを逆立てながら先ほどの槌を構える
周りの虫たちはこちらの様子をうかがうように触手を動かしてじりじりと近づいてくる
ここでユウキも思い出したように無刀・音無しを構える
あのがり勉君の再来以来、あまりの威力に危機感を覚えたため、一応アキに使い方を聞いておいたのだ
無刀・音無しは簡単にいえばこれは音の武器である
先のパワードスーツのように音を発生させ、防御、打撃、斬撃まで放てるらしい。音響兵器としても使えるので敵の無効化にも向いてるのだとか
虫には効かないけどね
持ち手の下からはカッターのような刃を出せるようになっていて、これを超振動によって何でも斬り裂けるとか
無刀じゃないのかと言いたい
そんなことより虫に囲まれてるんだった
「先輩。ここは全滅させていきましょう」
「いやいや、道を切り開いてあの大穴に突っ込んだ方がよくない?」
「先輩は馬鹿ですか?」
「なんで・・・・・なの?」
とキキがかわりに聞いてくれる
「穴を降下してる最中に襲われたらひとたまりもないだろう。ここなら武器の補充もできるし、全滅させておくのが得策だろう」
と晃
何でそんなにこの状況になじんでんの?お前ホントに平和ボケした日本人?
「そういうことです。もし先輩があの穴をロープなしのバンジージャンプで降りるつもりなら話は別ですけど」
「パパならできる・・・・かもなの」
「うん。できなくていいや、俺人間だもの」
「まあすぐに終わらせますからちょっと見ててください」
アキはそういって近くの巨大コオロギに向かって死刀・グラディウスを振り下ろす
でもそのコオロギまで近いと言っても距離が5m位はあるんだけどね
アキの腕を振るった延長線上に赤い閃光が一直線に伸びて世界を切り裂く
まるでそれはレーザーだ
その赤い閃光はコオロギとその先にいる虫数匹を巻き込んで切り裂く
それを皮切りに周りの虫たちが襲ってくる
アキは一切表情を動かさずにナイフを振り回す
赤い閃光や青い何かが飛び交って狙いすましたかのように虫たちを迎撃していく。おかげであちこちに虫の翅とか脚とかの残骸が飛び散って結構グロい
虫たちは恐ろしい速度で襲ってくるが一匹としてユウキたちに触れることすらできない
アキが地面から空中まで飛び回り、レーザーやら火やら挙句の果てには雷までが飛び交って周りは燃え上がり、凍り、虫の死骸が散乱し、軽く世紀末だった
「終わりましたよ、先輩」
「お、おう」
キキだけでなく晃まで若干引いているんだが・・・・・・・・アキ、恐ろしい子
先ほどの動きはどう考えても人間の動きじゃなかった。あの速度。おそらくあのパワードスーツの力なんだろうなあ
俺にもやろうと思えばできんのかな、おんなじの着てるんだし
先に行くアキについていき、大穴に近づいていく。周りを見回す限りはもう虫はいないようだ
しかしほんとに深そうだなこの穴
これ、どうやって降りるつもりなんだ?
アキが何やらごそごそしている
白衣のポケットの中から取り出したのはロープだった
「まさかそれで降りるとか言わないよね?」
「ん?言いますけど」
「ここはアキが技術力を発揮して空を飛ぶ何かを使おうよ」
「私はそうしますが、先輩方の分はありませんのでロープで降りてください。キキちゃん位なら背中に背負えるので平気ですけどね」
仕方ないのでロープで降りることにする
この穴何メートルあるんだよ
ユウキたちは暗い穴の中をゆっくりとロープで降りていく
アキだけがキキを背負って腰の両側と靴についている機械から火を出して飛んでいるが
深く深く降りていく
案外すぐに底につく
100m位降りたけど
パワードスーツの補助を借りて大して疲れなかった。俺は
晃は息切れしてるが
周りはそこそこ広い空間が広がっていた
そこには暗い中に大量の穴がいくつも開き、どこかへと続いていた。その穴はどれも蛇の巣穴かなにかのような感じで、大きく穴が開き人間の入れるくらいの洞窟になっている
それは天井付近にもいくつも存在し、まるで立体の迷路だった
「これじゃ迷っちまいそうだな」
「そうですね・・・・・・・・・・ここは」
アキは懐から白いBB弾みたいなものを地面にダバダバとおとしていく
まるでBB弾の不法投棄だ
「ポイ捨てはよくないと思うぞアキ。ゴミはごみ箱にって偉い人がよく言ってるだろ」
「先輩は相変わらずアホですね。それでほんとに霊長類なのか調べてみたくなります」
アキはそういっている間にさっき撒いたBB弾もどきから羽が生えてふよふよとどこかに飛んでいった。数が多いからキモイ
「わぁ~いっぱいなの~」
なぜかキキは大喜びだが
「これは・・・・・・・・小型のドローンか?」
「流石晃先輩は理解が早くて助かります。その通りで、これで道を調べて博士までの最短ルートを割り出します」
「そうなのか」
小さい羽根の付いたBB弾もどきはいろんな穴に入っていき、消えていく
その穴の中のいくつかからもぞもぞと黒い何かが動いている
「ん?なんだ?」
「あれは・・・・・・・・・アリだな。ただし50cm位ありそうだが」
説明ありがとう晃
そんな感じで穴から次々と巨大アリが次々に這い出して来る。この穴もしかしてアリの巣だったんじゃね?
「ルートが割り出せました!!」
「うおっ!速いな」
アキはスマホのような端末を見て言う
「で?どっちに向かえばいいんだ松下」
「あの穴です!!」
アキの指さした穴は巨大アリが他の穴より大量に出てきている穴だった
他のルートで行きたいな
「奴らを蹴散らして道を開きますついてきてください」
アキが穴に向かって走り出したので3人でついていく。その時地味に晃が銃を乱射し敵を牽制していた。すげぇ、マジでこいつ何もんだよ
かっこよすぎだろ
アキは先ほども見せた死刀・グラディウスの真ん中にある機械から赤いレーザーをだし、敵を次々に狙い撃っていく。刀の形状だが銃としても使えるようだ
キキと手を背中に背負ってアキについていく
とは言っても危機は背中にへばりついているだけだが。あったかい柔らかいモフモフだ
穴の中は入り組んでいて暗く、所々アキの殺したアリがぴくぴくとしながら転がっているので歩きづらい
ライトはもらってるので周りは見えるが
道を暫く進んでいるといくつもの分かれ道にぶつかる。アキは道を迷いなく進んでいくのだが、進む道以外からもアリが迫ってくる
ユウキは無刀・音無しから発生する音の斬撃によりアリたちをぶった切っていくが、いかんせん数が多く手間取ってしまう。そんな感じで時間を食っているところに倒したアリの死骸を踏み越えてアリが次々と襲い掛かってくる
おかげで囲まれてしまった
「迎撃しきれん!!」
「アキ!ちょっとピンチ!囲まれちゃったんだけど!」
前の方からアキの声が聞こえる
よく見るとアリの向こう側にいるようだが向うも迎撃に手間取ってこちらを手助けは出来なそうだ
「先輩!キキちゃんの持っているハンマーを使ってください!手のところにあるボタンを押して使ってください!」
「ハンマー?」
ミョルニルか。ユウキはキキからハンマーを受け取り、目の前のアリめがけて横薙ぎに振るう。持ち手についているボタンらしきものを押しながら
バリバリバリ!!!!!!!
轟音を響かせながらハンマーから雷が発生し、閃光が迸った。その光と電気は山のように襲い来るアリたちを吹き飛ばしていった
周りにいたアリは大半を一撃で倒したらしい
「ぽかーん」
あまりにもびっくりしすぎて口で言ってしまったが、アキ以外はみんな驚きに目を見開いている
おかしいなハンマーってこんなに危ないもんだっけ?
「大丈夫ですか?先輩」
アキが駆け寄ってくる
「あ、ああ・・・・・それよりこのハンマー何なんだ?」
「先輩はミョルニルも知らないんですか?北欧神話とか最近の映画とかに出てくると思うんですが。簡単に言ってしまうと雷を打つことのできるハンマーですよ」
ふんすとアキが胸を張る
張るほどないが
何でも雷は10億Vもあり、その圧倒的なエネルギーによって空気が1万℃くらいまで熱されるんだとか。その際に発生する衝撃波はなかなかなもので、よく聞くゴロゴロゴロと言った感じの音は空気が爆発して発生してるんだそうな
先ほどは雷のその衝撃波で吹き飛ばし、ダメ押しとばかりに放電させたことでアリを全滅させたんだとか
何が言いたいかというと、雷には気を付けてねということだ
洞窟の中をどんどん進んでいく。先ほどのようにアリに囲まれることは今のところはない
ほとんど襲ってこないところを見ると案外ほとんど倒してしまったのかもしれない
しばらく暗闇の中を少しばかりのアリと交戦しながら進んでいくと
その先にわずかな明かりが見えた
「兄さんがいない。どこ行ったんだっけ」
「ふっ彼は自分を探しに行ったんだよ。かつてのボクのようにね」
「あなた誰ですか」
「通りすがりのただのドМだよ」
「うわぁ」ドン引き
「そのさげすむような目がいい!君、ボクの嬢様になってくれないかい!」
「嫌。キモイ」
「そんなことより、次回予告・・・・しないと」
「ユリコさんもいたんだ。と、それはいいから次回予告」
「次回、ドМ大冒険~新たな扉を開こう~」
「適当なこと言わないでよ!時間が無くなっちゃうから」
「次回、博士登場・・・・・・です」
「大事なところユリコさんにとられた~ごめんね兄さん今度は頑張るからね!」