ユウキの不安
ついにシリアス展開が始まる!
その日の夜
学校隣接のアキの研究所
ぴーぴーぴー
携帯電話型の機械からは無機質な電子音が響いていた。これはどこにでも通じる市販のものではなく、アキがかつてある人物から渡されていたものだった
もう十年以上も前に
「やっぱり。どうして連絡がつかないのでしょうか『博士』。もしかして危険なことをしていたりはしませんよね」
アキは苦々しく顔をゆがめる
アキは少しだけ心配していた。たまにあの人は驚くほど危険なことにも平気で首を突っ込むのを知っているからだ
口癖は『危険の先にこそ発見はある』だったし
「『博士』がこうなったら連絡するように言ったのに・・・・・・・・・・・今度、先輩とキキちゃんもつれて確認に行く必要がありそうですね」
翌日
ユウキは朝からユリナに絡まれていた
相変わらず全裸である。自然と一体になるのは勘弁してほしいもんだ
「ごはん~食べさせて~口移しで~」
「ユリナもいい加減自分で食べろよ」
「口移しが~いいの~」
まるでユリナは子供みたいにユウキに甘えてくるが、子供はキキだけで十分なのだ
そのキキはというと最近アキに作ってもらったぬこ様人形を気に入っていて、ユウキが相手をするまでもないのだが。あれは、なかなかすごいぞ?まあアキが作ったのだから当然なのだが
飛んだり跳ねたり、しゃべったり、完全防水だったり、最終的には空まで飛んでいた。無駄すぎる高機能だ。おかげでキキは長い時間飽きずに遊んでいられるのだろうが
今日も今日とてユウキ、リサ、キキの三人で30分くらいかけて駅まで歩く
ユリナは学校にはやはり行かないようだが
朝の陽ざしがまぶしい
「パパ。見て!ぬこ様がかわいいの」
「ほう、確かに可愛いな。キキほどじゃないが」
言われてみれば小さくてぴょこぴょこキキの手の上で動くので小動物的な可愛さがある
とそこでリサがしゃべりかけてくる
「兄さん兄さん。私のこともかわいいって言っていいんだよ?」
「寝言は寝て言え」
ショボーン
それから電車に15分ほど乗っていつも通り学校に向かう。そういえば痴漢はもういないのかな?あのおっさん哀れだったな
俺も気をつけないとな
たまにリサとかが尻や胸を触らせてきたりするから
少し歩いて
そろそろ、朝アキの研究所によっていくのも日課になりつつある
「アキ~来たぞ~」
「五月蝿いですよロリコン先輩。性犯罪者らしく、早く自首するか私の奴隷になるかしてください」
そしてこのアキの軽口を聞くのも日課になりつつある。まったくアキは俺がマゾに目覚めたらどうするつもりなのだろうか
まあそんな感じでキキを預けて教室に向かう
とその前にアキに止められる
「先輩。今週の日曜あたり時間ありますか?」
「デートのお誘いか?まあいつも暇と言えば暇だが」
「そうですか。でしたら日曜日、キキちゃんもつれて朝7時にここに来てください」
「ん?おう」
キキも、ということはデートじゃないのか。なんか厄介な臭いがするな
晃も巻き込んでおこう
駄洒落じゃないよ
教室に向かいリサと他愛ない話をして別れた頃
階段を上がった2階の先
2年の廊下に変なものがいた
そいつは全身迷彩柄の軍服でアサルトライフル(m16)を持って匍匐前進をしていた
こんなことする変人は一人しか思いつかない。だが外れてほしい。友人がこんなアホなことする奴であってほしくない
と、そこでそのアホな奴がユウキに話しかけてくる
「ん?ユウキかどうした?頭なんぞ押さえて、モテる男はつらいぜってか?」
「いや、予想が外れてくれなかったことと、お前がこんなにもアホだったことを残念に思っていただけだ」
「そうか、大変だな」
ホントだよ
「ああそういえばアキが今週の日曜なんかやるみたいだから、一緒について来てくんない?」
「む?まあいいが?」
これで道連れ兼人柱を確保したぜ
その後そのアホの子と二人で教室に入り、ユイにいつも通りにらまれながらいそいそと席に着く
晃は教師に見つかると、「ふぉぉぉぉぉぉおぉおおお!!!!」とか叫びながらアサルトライフルで教師にフルオートでBB弾を乱射して、銃と軍服を没収されていた。マジでどんだけアホなんだ・・・・・
良い子じゃなくても真似しないでね!
そんなバカみたいな
日常の中
今日もつまらない授業を聞いているユウキ
「変だな・・・・・?」
お分かりいただけただろうか
ユウキが授業中なのに寝ていないのだ。これはすばらしい快挙だが、ユウキは一人首をひねっていた
なんか嫌な予感みたいなものがしたのだ
それでも、それはすぐに消え、またユウキは眠りについてしまうのだが
夢の中
白い世界
なんだか久しぶりな気がする
相変わらず白いワンピースを着た少女がユウキのことを優しげに見下ろしている
ユウキは今、膝枕をされているみたいだ
その柔らかい感触に包まれ、身をゆだねながらユウキは彼女の顔を見る。彼女の顔にはもう、もやはかかっていなかった
その顔はかなり整っていた。化粧っけは一切ないのにもかかわらずそこらのアイドルが裸足で逃げだすような整った容姿をしている
透き通った肌。綺麗なつやのある銀髪。円らな綺麗な青い瞳。清楚な雰囲気
どれもユウキの理想を体現しているかのように美しく整っていた
彼女はユウキに悲しげに微笑んで一言
「気を付けて」
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昼もいつもの5人で雑談しながら昼食を食べた
研究所に向かうユウキたちをうらやましそうに見るユリコの姿が気になったが
「アキちゃん!兄さんが最近私に冷たい!」
「はぁ、そうですか。そんなことないと思いますが」
「アキちゃんも冷たい~!!」
「リサ。冷たいの?あっためるの?」
といってキキがリサにぎゅーと抱き付く
なんていい子なんでしょうか、そして女の子同士がいちゃつくのも・・・・・・・ゲフンゲフン
「先輩は相変わらずの変態さですね。気持ち悪すぎて吐きそうです。背中を撫でて落ち着けてほしいですあ。わよくば背中だけでなく全身を___」
「どういうこと?」
「お前がロリコンから百合好きのロリコン変態に昇格したということだ。嬉しく思え。そして今度百合ロリ系の珍しいエロゲーを貸してやろう」
「嬉しくない」
その後
午後も快眠して
起きたら放課後
またいつの間にかどこかに消えていた晃は放っておいて、リサの教室により、一緒にキキを回収してから帰路に就く
途中、リサが忘れ物をしたとか言って教室に戻ったので俺とキキは先に帰ることにした
キキと二人で帰るのは初めてなので新鮮だ
電車の中
「パパ。キキね、パパがいないとちょっと寂しいの」
授業でアキの研究所におきっぱなしにしていることを言っているのだろう。昼休みは会えるといっても一時間にも満たない時間だしな、子供のキキにとってはやはり寂しいものなのだろう
「そうか、ごめんな」
寂しい思いをさせないと決意したはずなのに
「でもね。キキ、パパのために我慢するの」
「おお!キキはいい子だな~」
キキの頭をなでてあげる
「その代わりね。ご褒美がほしいの」
「ご褒美?なんだ?大抵のものならあげちゃうぞ、キキ可愛いから」
「キキね。パパにチューしてほしいの」
はい?そういうこと電車内でいうのはちょっと
キキが頬を染めながら言うので余計に周りからの鋭い視線が・・・・・・・・・・・
違うんだロリコンじゃないんだよ。ほんとに
「そ、そのうちね・・・・・」
といってユウキはごまかし
そんなこんなで家に着く
まだ陽が短いようでもう夕日は沈んでしまっている
この家の食事は基本的にリサが用意している。ユイはできなくもないが、彼女はユウキのことを嫌っているし、キキのことも気に入らないようでユウキやリサには作らない
ユリナにはともかく。だが、しばらくしてもリサが帰ってこない
それなのでキキもユウキもお腹を空かせていた。ユイも帰ってこないのも気になるし
「リサ遅いな・・・・・・いつもは寄り道せずにすぐに帰ってくるんだが」
外はもう暗くなって肌寒い風が吹いていた
さらにオレンジ色の夕日も今は沈み
町も暗く染まって、夜の闇が世界を包み込み始める。その闇と風はユウキの背筋を静かに駆け抜け、なんとなく重苦しいものを心に残していった
ちょっと心配だし、キキは家に置いて一回学校に戻るか
最近物騒だと聞くし
あれ、誰に聞いたんだっけ?
あ、そうだ晃だ
不穏なうわさがどうとか
そこまで思い出しさらに嫌な予感を感じたユウキは
駅までチャリでかっとばし電車に乗り込んだ
そこでユウキの携帯にメールが来て、着信音が鳴る
なんとなくその軽快なメロディーの着信音すらも、今はユウキの不安を掻き立てる材料にしかならない
なんだろう。よくわからないけどすごく、嫌な予感が・・・・・・
メールの相手は晃だった
ちょうど学校の最寄り駅に着いたので読みながら電車から降りる
ここから学校まで走って5分だ
メールの内容は
今すぐ学校に戻ってこい
ただ一言だけだった
晃は確かに、いつもそんなに長文を送ってくるようなやつじゃない。だから今回もきっとエロゲーの新作を見つけたとか、学校ですごいエロ本が落ちてたとかそんな感じだろう
そうにきまってる
きっとリサの帰りが遅いのとは関係ない
そのはずだ
よくわからないがユウキの中に嫌な焦りと不安が募り、どんどん加速していく
マジで大丈夫だよな・・・・・リサ
読んでいただき感謝します
次回リサが・・・・・・・・・・・・