32 幕開け
アレクセイ国王陛下の言葉を合図に優雅な音楽がホールに流れ始める。ゆっくりとしたテンポで奏でられるそれは、人々を優雅な舞踏会へと誘うかのような音色だった。ホールの一角に集まっているオーケストラの演奏者の中に、ハンナとアルテミスが居るはずだ。
「さて。こうして顔を合わせるのは初めてだな」
賑わうホールを見下ろしていた所にアレクセイ陛下の声。アズは慌てて姿勢を正し、両手でスカートの裾をほんの少し摘まんで会釈した。
「この度は、私などの為にこのような舞踏会を開いて頂き――」
「よい。堅い挨拶は苦手なのだろう?無理をせずともいつも通りに振る舞えばいい」
顔を上げると、表情を緩めた陛下の顔――。先ほどの厳格な表情は表向きの顔なのか、刃物のようなオーラを感じることはなかった。青い瞳にまっすぐ見つめられ、アズは見抜かれていた事に驚きはしたものの、有難く甘んじることにした。
「ありがとうございます、陛下。どうにも緊張してしまって……」
「誰にでもある、気にすることはない。……それにしても、正直驚いた。こんなに若いとは」
「……よく言われます」
苦笑して肩をすくめて見せると、「失礼だが、歳を聞いても?」と尋ねてくる陛下。アズは16歳と言いかけて、今日で17歳になったことを思い出した。
「17です」
「!!」
反応したのは陛下ではなく、その後ろでそわそわとこちらを覗き込んでいたアリアエル王女だった。ぱあっと顔を輝かせて目を見開いてアズを凝視してくる様に目を瞬くと、
「そうか、17か。ふむ……」
アレクセイ陛下は顎に手を当て、何かを考えている。王女の突き刺さらんばかりの視線に耐えかねて視線を横にずらすと、マリアンヌ王妃がヴェールを見上げて「小さいわねえ。可愛らしいわねぇ」と爆弾発言を投下していた。内心物凄く焦ったがヴェールもそこら辺はきちんと理解してくれているようで、口元を一瞬だけ引き攣らせた後に『どうも』となんでもないように振る舞ってくれた。……王妃が“小さい”発言をした後に“可愛い”って言ってなかったら危なかったかもしれない。
「アリア」
「はいお父さまっ!」
待ってましたとばかりに返事をする王女を一瞥し、陛下がアズに言った。
「歳が近い同性同士の方が話も弾むだろう。少し外へ出て気分を落ち着けてみてはどうか?」
「え、あ……はい!ぜひそうさせて頂きます」
「ではこちらへ!」
言い終わる前に手を引かれ、陛下たちが出てきた方とは反対側の袖へ引っ張って行かれた。目の前には大きな両開きのガラス窓があり、その脇に立っていた兵士の男性が頭を垂れて窓を開けた。王女はアズの手を引いて窓を抜け、広いバルコニーへと誘う。
満点の星空の下、白い手すりのある末端まで行くと手を離され、髪を振って勢いよくアズに向き直ると開口一番。
「私と同い年なのねっ!」
嬉々とした表情で詰め寄ってきた。
「17歳!嬉しい!やっと同い年の女の子とお話しできるなんてっ!しかも貴女がセイレーンだなんて夢みたい!」
「こ、光栄です。アリアエル王女殿下」
「もう、堅苦しいっ!アリアって呼んで?親しい人たちにはそう呼ばれてるから!」
「えっ?で、でも……」
「ね、お願い!私、同い年の女の子のお友達を作るの、ずーーっと夢だったの!ほら、私って王女でしょ?それもこんな大きな大陸をまとめる王都の。大抵の子って、辟易するかお金とか地位とかが目当てなのばっかりで……でもそんな子と友達にはなりたくないの!本当の友達が欲しいの!城下街の子たちみたいな、何でも話し合えて支え合える本当の友達が!」
勢いの強かった口調が、最後に行くにつれ切実なものへと変化していく。アズはどうしたものかと考え込んだ。
王女と友達になれるなんて、アズの方こそ夢のようだ。でも自分でいいのかという不安も拭えないし、何よりなぜアズに執着するのかが解らない。
すぐに返事をしないでいると、「……駄目?」と目じりを下げ瞳を潤ませて首を傾げる王女。……その顔が駄目です。私が男だったら落ちてます。
「あの、そうじゃなくて……ですね。あたしでもいいのかなっていう気持ちもあるし、なんであたしなんかをって言う思いもあるんです」
「そんな事?理由なんて得にないわ。あ……でも1つ挙げるなら、アズが庶民の子だからって言うのもあるかも……」
考えるように空を見上げて言うと、ハッとして「い、今のは別に馬鹿にしたわけじゃないからね?あくまでも羨ましいって言う意味だから!」と慌てたように手を振った。そのさまが妙に王女らしくなくて、アズはくすりと笑いを漏らす。
「アリアって本当に王女様?なんか親近感湧いちゃうな」
「!」
目を見開いたアリアに微笑みかけ、アズは続けた。
「あたしなんかでよければ友達になります」
「ホント?」
「うん」
「~っ!!」
しっかり頷くとふるふると震え始め、「やったーっ!」と万歳して大はしゃぎ。終いにはアズの両手を持ってくるくると回りだす喜びよう。こんなに喜んでもらえるとは思ってもみなかったので、なんだかこっちまで嬉しいやら恥ずかしいやら。
「じゃあじゃあ、2人の時は名前で呼び合いましょう?ルディアナに来たときはお城に寄ってね!そしたら2人で城下街を散策するの!あとショッピングも!お泊りもしてみたいわ。私がアズの部屋に、アズが私の部屋に!それで、夜が明けるまで恋バナをするのっ。お互いに好きな人の名前を言い合って、アドバイスし合うの!」
頬を染めてきゃあきゃあとはしゃぐアリアに、アズもつられて「あたしはアドバイス出来ないな~」なんて笑って言ってみる。
憧れ……確かにお姫様であるアリアからしてみれば、アズのような一般平民の暮らしに憧れてしまうのも無理はないと思う。反対に、アズだってお金持ちの生活に憧れた事がないとは言えないのだから、お互いがお互いの経験した事のない生活に憧れてしまうのは必然と言ってもいいだろう。
彼女の切なる願いは、王都の王女として、未来の女王としての尊厳を守るための、途方もない大きな見えない壁に阻まれて叶う事はなかったのだと思う。先ほどの彼女の話を聞いて、それを痛感してしまった。
自分でよければという言葉にも思いにも偽りはないし、アリアは王女である前に1人のお年頃の少女だ。やってみたい事だってたくさんあると思う。だから度々城を抜け出したりして、城下町に入り浸ってしまうのだと同じ年頃にいるアズは1人で勝手に納得している。
アレクセイ陛下もそれを解っていて、アリアと話をさせる機会を設けたんだと思った。あくまでアズの勝手な想像だが。
「2人でいるときは名前で呼び合うけど、皆の前だったら王女様として接するね?そうじゃなきゃ怒られちゃうと思うから」
「うんっ!ありがと、本当に嬉しいわ!……ね、まだ時間あるでしょ?紹介したい子がいるんだけど」
「ホント?是非っ」
「ふふ、とっても綺麗なの」
とても誇らしげに微笑むとバルコニーの外に体を向けて「レヴィー!」と声を張り上げた。すると、上空から重々しい金属がこすれ合うような羽音が降りてきた。驚く反面、まさかと言う期待が胸の中で大きく膨らんでいく。
「紹介するわ。ゴールデンドラゴンの、アールレヴィ。私の大切な家族よ」
アズに向き直った彼女の後ろに、大空から舞い降りた黄金色の大きな竜が鎌首をもたげて真っ直ぐにアズを見つめた。吸い込まれてしまいそうな琥珀色の瞳は、見る者すべてを包み込んでしまいそうなほどの温かい光を帯びている。月光を浴びて照り返す黄金の鱗は一枚一枚が大きく、そして厚い。身動きするたび、ガラガラと心地いい金属音がする。……不思議だ。こすれ合う金属音が心地よく感じるなんて。黒板を引っ掻き回す音だって1秒たりとも耐えられない人間なのに、その音に聞き入っている自分がいる。
言葉を失って魅入っていると、その反応に満足したアリアが「ね?綺麗でしょ?」と自分の事のように笑う。
「……言葉も出ません」
「だって、レヴィ!よかったね」
『嬉しいが、アリア……彼女を紹介してくれないか?』
「あ、そうだったわね。―――知っての通り、セイレーンのアズ・キサラギ!私のお友達よ」
じゃーんっ!という効果音付きでレヴィの前に押し出されると、「は、初めまして」とようやく言葉が出た。近くに来て見ると、美しさにも拍車がかかる。鱗の光沢にも一点の穢れも汚れも見えない、まさに完璧な美しさだった。
『初めまして。私のことはレヴィと呼んで頂きたい。……アリアは活発でお転婆な娘だが、誰よりも人を想う心と行動力に長けた才能を持っている。たまに無茶や我儘と言うが、どうかアリアをよろしくお願いします』
「あ、いえいえ!こちらこそ、よろしくお願いします」
お互いに頭を下げて深々と礼をし合うと、「やっぱり父さまに似てきてるわ、レヴィ……」と溜息混じりのアリアの声がした。確かに話し方もなんとなく似ている気がするが。
『私がこの世に生を受けたのは、今から500年ほど前。それからずっとこの城で、歴代の王とともにこの国を見守ってきた。死にゆく王を看取り、新たなる王の誕生をこの目で見てきた私だから感じ取ったのだ。―――この子は、どの歴代王達にもなかった王たる資格の持ち主。この子の治めるルディアナは、きっと今まで以上に発展した素晴らしい王国になる。……だから私は、アレクセイではなくこの子と共にいる』
「王たる資格……」
「何かあるたびにそれを聞かされるけど、私はそうは思っていないの。むしろ父さまにはまだまだって言われているし、怒られてばかりなのに……レヴィは大袈裟なのよ」
『そんなことはない。ゴールデンやシルバーが王都を治める王家の者にしか従わないのは、世界の均衡を保つために共に協力し合って国を発展させていかなければならないからだ。だから、4大陸の王都にそれぞれ私と同じような竜が存在している。……一部は間違った方法で国を発展させている竜もいるようだが、な』
興味深い内容だ。ウィードの授業では王家の象徴、という話だったが、それだけではなかった。
『それに言っておくが、アレクセイが君に小言を言うのは、何も言わずに無断で外出するからであって君の素質の有無には関係ない』
「だって、言っても許してくれないじゃないの。だから無断で出ていくのよ?」
『それは君が“1人で城下町に行きたい”などと駄々をこねるからだろう?なぜアレクセイが許さないかもっとよく考えないか。大切な1人娘を護衛も付けずに送り出せるわけがない』
「父さまは過保護なのよ。私だって護身術や剣のお稽古だって毎日欠かさずやってるのに。それに!護衛なんて付けられたら食べ歩きできないでしょ?太るからとか健康に悪いからとか言われるなんてうんざりだわ!」
『またそんな事を……。だから体重が増えていたんだな』
「なっ!?ど、どうしてそれを!」
『この間の飛行訓練の時だ。道理で2㎏増えたと思っ―――』
「きゃーっ!!」
ばっとアズの両耳を塞ぎながら顔を真っ赤にして叫びだすアリア。別に2キロくらいがなんだ。増えたところでアズとなんか比べられないくらい軽いくせにさ、と1人やさぐれてみたり。
でも。
「2人って中いいよね。なんか親子って言うより兄妹みたい」
くすくすと笑いを漏らすと、アリアとレヴィが顔を見合わせて「家族だからね」と声をそろえて笑うのであった。
アズの世界の事が聞きたいとアリアに催促されたので、簡単にではあるがこの世界にない物の事を話してみた。
クリスタニウムに来て真っ先に思った事は、どこにも車が見当たらないという事と、飛行機が飛んでいないという事だった。まあ、竜が当たり前のように存在して飛行手段として用いられている時点で予想はしていたが、やはり無いと無いで最初は落ち着かなかった。
車も似たようなもので、この世界の人々の交通手段はほぼ馬や馬に似た生き物を使って馬車を引かせるというものだった。なんだが中世のヨーロッパにでもタイムスリップした気分だ。もちろん竜はいなかったと思うけど。
そんな話をアリアにしてみると、それはもう面白いくらいに食いついてきた。目を宝石のように輝かせ、「車って何?飛行機って何?」の質問攻めだ。機械系に全く興味のないアズは詳しい構造を知らなかったためあまり解説できなかったが、
「要は、鉄の箱が走ったり飛んだりするって事」
「鉄!?フロウクリスタルもないのに鉄なんて重いモノが空を飛ぶの!?地上を走るのっ!?いったいどうやって?」
「……うん。科学の力で」
ロクに知らない自分が急に恥ずかしく思えてきた。もっとまじめに授業受けとくんだったと後悔……先生、ごめんなさい。
レヴィに「また後でねっ」と残してバルコニーを出る。陛下の元へ行くまでにクリスタニウムにはない科学の力について話し合っていると、陛下と話をしているゼノと、その隣に立っているクラウスの姿があった。隣から「ハッ!」という声。瞬きをしてアリアを見ると、顔が真っ赤だった。……おやおや?
「アズ。王女とご一緒だったか」
「はい。少し外でお話してました」
アリアの顔色を気にしつつゼノの傍に寄ると、アリスが居ない事に気がついた。視線を彷徨わせるとゼノが気づいてくれ、
「アリスならあそこで話してる」
とホールの中央を指差した。
見れば、たくさんの男性に囲まれて楽しそうに談笑している副団長様の姿。……どう見ても逆ハーレム状態だった。
「……そうですか」
なんとも言えない表情で頷いて顔を戻すと、アリアが顔を輝かせてゼノに飛びついてきた。「おわっ」驚いた声を上げてアリアを抱き留めるゼノは、次の瞬間には顔をしかめさせていた。
「姫様、危ないでしょう」
「だって嬉しいんだもの!でも今日という今日は絶対に逃がさないわ」
なんだかとても親しげだ。目を瞬いて様子を伺っていると、アリアがゼノに抱きついたまま頬を膨らませた。
「騎士団抜けてからまともに会いに来てくれなかったじゃない!父さまとばかり会って……私だってゼノとお話ししたかったのに」
「申し訳ありません。色々と立て込んでいておりまして」
「嘘。この間母様とお茶してたでしょ?私知ってるんだからね」
非難がましく見上げるアリアの視線から逃げるようにしてゼノがマリアンヌ王妃を見つめると、王妃は口元に手を当てて「うふふ」とにこやかに笑う。
「……騎士団?」
ああだこうだと言い訳しているゼノを眺めながら小さく呟くと、隣で腕を組んで事の成り行きを見守っていたクラウスが説明してくれた。
「ルディアナの誇る聖竜騎士団、クライスセブンの事だ。師匠は、昔その騎士団の団長をされていた事がある」
「聖竜騎士団の団長!?」
「知らないのか?」
「知りません!初耳ですっ」
聖竜騎士団については、奇襲事件の際にラフィエルが口にしていたので存在自体は知っていた。けれど、まさかゼノがその騎士団の団長をしていたなんて知っているわけがない。
「どうして辞めちゃったの?」
つい勢い込んで聞いてしまい、クラウスの咎めるような視線を受けてから「あ……」と我に返る。詮索はNGだった。
「間違っても師匠に聞くなよ」
「……うん」
軽率だった自分に反省していると、話が終わったらしいアリアがこちらに歩いて来た。すると突然顔を真っ赤にして、アズの隣にいるクラウスに俯きがちに声をかける。
「ご、ごきげんよう。クラウス様……」
「お久しぶりです、アリアエル王女殿下」
胸に手を当てて仰々しく礼をするクラウスを見た途端、急に背中がむずかゆくなった。ゼノ以外に敬語使ってる所なんて初めて見たから、なんか余計に変な感じだ。なんだか邪魔しちゃいけないそうな雰囲気に負け、アズはゆっくりと後ろへ下がった。
「あの、クラウス様。もしよろしければ、これから一緒に踊って頂けませんか?」
「私などでよろけしれば、喜んで」
即答だ。まあ、アリアに誘われれば断る理由なんてないだろう。
差し出されたクラウスの手に自分のそれを重ね、2人は階段を下って行った。アズとすれ違いざま、クラウスと一瞬だけ目が合う。何を言わんとしているのか全く読み取れなかったが、続けてすれ違ったアリアがはにかんで小さくガッツポーズをしたので笑顔で返した。
クラウスがアリアの好きな人……という事なんだろう。顔が赤くなったのもそのせい。……それで恋バナか。意地らしくて可愛いなあ、もう。
「じきに始まる。アズも行って来たらどうだ?セイレーンと踊ってみたい男がわんさかいるぞ」
「え……」
突然の提案に驚いてしまうが、ここはダンスホールで今宵のメインはダンスだ。こんなに着飾っているのに、ここで踊らなければ何をしに来たのか解らない。アズは覚悟を決め、戦場に赴く表情で「はい!」と返事をした。
「そんな顔しなくてもいいだろ。リラックスだ、リラックス」
「頑張ります!」
ガッツポーズをしてゼノに応えると「それも違う気がするけど……まあ、いいか」と呆れ顔。気を引き締めて階段を下り始めた時、ふとバルコニーに視線を向けると、外にレヴィとヴェールの姿があった。いつの間に外に出たのやら。
気になったが、会うのを楽しみにしていたようなので水を差してはいけないと思い、そのままホールへと歩いて行った。
**
「……はあ」
深い溜息をついて、アレクセイ陛下が玉座に腰かけた。ゼノはその隣に立ち、「いかがなされましたか?」と尋ねる。
「何故あんなにも若い娘がセイレーンに……?こう言っては難だが、セピアノスは一体何をお考えなのだ?」
額に手を当てて、絞り出すような声音で陛下は呟く。ゼノは少しの間沈黙した後、静かな声で応えた。
「確かにアズは若いですが、クリスタルマスターとしても、セイレーンとしても申し分ありません。戦闘能力も持ち前の運動神経の良さが支えになって、素人とは思えない実力を発揮させています。情に流されやすい所もありますが、やると決めた事は何が何でもやり通そうとする強い信念も持ち合わせており――」
「違う。違うのだ、ゼノ。私が言いたいのは、何故アリアと同じ年頃の娘が身を危険に晒して戦わなければならないのか、ということだ。お前の報告では、平和な国から召喚された戦を知らぬ平凡な少女なのだろう?それがよりにもよって、世界の命運をかけた戦の筆頭に立つセイレーンなどと……。私は、子供が戦に駆り出される姿など見たくない」
「……」
口をつぐんで、そっと目を伏せた。
陛下の言葉は、あの日……アズがセイレーンとして自分の目の前に現れたあの日から疑問に思っていた言葉、そのままだった。
こちらの世界事情に巻き込まれなどしなければ、今頃は学業に励んでいるはずの学生だというのに。
「……」
優雅な交響曲に合わせてホールで踊るアズをここから眺め、ゼノはなんとも言えない複雑な気持ちで静かに拳を握りしめた。
更新遅めですみませんっ!
色々あってしばらくは亀更新です……ご容赦を~><;