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クリスタル・クロニクル  作者: 氷柱
27/48

23 捜索


 たんっ、と足取り軽やかに、赤いレンガの敷き詰められた道を踏みしめる。城の方から吹いてくる暖かい南の風に髪をなびかせ、行きかう人々の合間を縫うようにして早足で歩き続ける。




 初めての任務を終え、冷たい影に襲われ、あれから一ヶ月。早いもので、この世界に来てそんな月日が経ってしまった。ふと思えば、レイズの宣告していた一ヶ月のリミットを少しばかり超えたと言うのに、あれから姿を現さない。それはレイズだけに言えることではなく、ノワール自体に言えることなのだが。


 あの日、冷たい影に襲われた日に、この世界を破滅させようとしている混沌の覇者が目覚めた――と、ゼノに言われた。その覇者こそが、以前夢の中でセピアノスが言っていた“この世界で誰よりも世界を呪い、誰よりも世界の破滅を願う者”であり、心をこじ開けるブレイクリスタルを生み出している邪竜――ブレイオスだった。


 かつてグラン・グレイフォスが生み出した神竜、かつての(つい)……セピアノスはブレイオスの事をそんなふうに言い表していたが、難しくてアズには理解できなかった。


「つまり、セピアノスとブレイオスは双子の“キョウダイ”って事?」


 そう尋ねてみれば、セピアノスは驚いたような顔をしたあとに、そうかもしれない、と苦笑したのだった。




 そうそう、キョウダイと言えば、以前ゼノとアリスの会話の中に監獄塔に住む双子の姉妹がいると言ったのは覚えているのだろうか?妹が看守長で、姉が副看守長を務める2人のクリスタルマスター。この一ヶ月の間に、アズは2人と顔見知りになったのだ。


 妹であり、監獄塔看守長こと、リオン・ローナンド。キリッとした顔つきに清楚感を漂わせる、頼れるお姉さん的存在。腰まで伸びる白銀の美しいストレートの髪を後ろへ流し、細身ながらも引き締まった体躯をしている。何かの武術に長けている人らしいのだが詳しくは知らない。


 そして姉であり副看守長でもある、セレス・ローナンド。……正直言うと、16年間生きてきてまったく関わったことのない(かなり変わった)人種だった。

 双子は双子でも二卵性双生児で、はっきりいうと似ていない。キリッとした印象を持つリオンに比べ、姉セレスはぱっと見はおっとりしている。目はタレ目で髪も緩い癖のついたウェーブで、リオンと似ているところがあるとすれば白銀の髪の色だけだと思う。


 こう言ってしまうと失礼かもしれないが、セレスはアズの想像を絶した変質者だったのだ。


 ある日の任務帰りのアズ。パートナーとして共に任務へ出ていたウィルと帰還し、飼育室から出てきたところで何やら視線を感じた。普段人の視線と言うものに無頓着なアズでも感じる、それはそれは不気味な感じのするねっとりとした視線だった。


「……っ!?」


「アズ?寒いの?」


 思わずぶるっと身震いするとウィルが心配そうに声をかけてくれた。サンサンと太陽の光が降り注ぐ昼過ぎのこの陽気で寒いわけはないのだが……と思ったところでアズは直感した。これは本能が恐怖したときにくる独特の震えだ。


「な、なにか感じない?なんていうか……ねっとりとした……いや~な視線――」


「あは♡」


 アズの声を遮るように聞こえた女性の笑い声にぎょっとした。ばっと振り返ると同時に顔に何かが当たり、「むぐっ!?」息が詰まるのもお構いなしにそのまま後頭部に手を回されてぎゅ~っと押し付けられた。


「やぁ~ん、何々この子すっごく可愛い~!食べちゃいたぁ~い」


「っ……っ!」


 すぐ頭の上で猫なで声のような甘ったるい女性の声。ということは顔に当たっているこのむにゅむにゅとした柔らかいものは胸なのだろうか。だとしたらすごく大きい。谷間に顔が埋もれているのだからE~Gくらいはあるかも――って、そうじゃなくて!!


「セレス。それ以上やったら窒息死すると思うよ」


「あらいけない。愛玩動物みたいに可愛いからやり過ぎちゃったわぁ」


「――ぶはぁっ!!」


 押さえつけている手が緩んだ隙に胸から顔をひっぺがして新鮮な空気をいっぱい吸い込む。


 おそるべし巨乳。あやうく殺されるところであった。大きすぎるのもよくないと身を持って思い知った。


「一瞬、セレスに愛される愛玩動物に同情しちゃった」


「何それ嫌味?それとも皮肉~?」


「両方かな」


「ホント、いくら顔が綺麗でもあんたみたいなガキに同情されたくないわぁ」


「俺もセレスみたいな女性は嫌かな。いくら大金払うって言われても肉体的にも精神的にも関わりたくない」


「あたしも男くさい男は嫌よぉ。可憐で女の子みたいな坊やなら好みだけどぉ……あなた女の子よねぇ?」


「へっ……へい!」


 小さくすぼめた口元に人差し指を当てて残念そうな上目遣いで見られ、緊張と恐怖からくる震えのせいでアズの返事は哀れなものになった。……居た堪れない、今の自分がとてつもなく居た堪れない。アズは泣きたくなった。


「アズが怖がってるよ。さっさと監獄塔に戻った方がいいんじゃない?仮にも副看守長ともあろう者が勤務時間中にこんなところで油売ってていいの?給料泥棒もいいとこだよね」


 無駄ににっこにっこ笑っているウィルが怖いせいもあるのだが、今それを言えば明らかに場の雰囲気が悪くなる。っていうか言えない。怖くて。


「あんたも言うわよねぇ。ロクな育ちをしてないせいかしら?大人に対する態度ってものが性根から腐りきってるわぁ。そこまで来ると逆に清々しく思えてきちゃう♡」


「あなたに敬意を払えと言うのも酷だけどね」


 ……なんだ、この腹の探り合いのようなダークな会話は。相手の悪口を言い合っているようにしか聞こえない。お互い一歩も引かずに笑顔で話している様が異常で、異様で、ふと周りを見渡せばアズたちの周りには人っ子一人いない。


 アズにとっては異常でも、セピア・ガーデンではよくある事のよう。誰一人として近寄ることなく遠巻きに眺めていたり見て見ぬ振りをしていたり。


 ……。


 帰っても……いいだろうか。


 セレスの胸に抱きしめられたまま未だに笑顔で睨み合っている2人をげんなりと見つめていたその時だった。


「ちょっと姉さん何してるの!?いないと思ったらこんなところに!」


 ハスキーな声のする方を見ると、向こうからつかつかと歩み寄ってくる女性が一人。セレスを“姉さん”と呼ぶところからすると、どうやら妹のリオンで間違いないようだ。


 腰まで伸びる長い銀髪をなびかせて颯爽と歩いてくる彼女を見てセレスがぴたりと動きを止めた。


「リオンちゃん……」


「ああ、やっと解放される」


 セレスがウィルから視線を逸らして目の前に立ち止るリオンを見た。ウィルが疲れたようにその場を離れ、抱きしめられたままのアズをセレスから引っぺがした。


「彼女が妹のリオン。セレスと違ってまともだから心配いらないよ」


 セレスから少し離れた場所に移動して、腰に手を当てて姉をガミガミと叱るリオンを遠巻きに見て「そうなんだ……」と曖昧な返事を返す。


「あれだけ無断で出ちゃいけないって言ってるのに……姉さん?ちょっと聞いてるの?」


「リオンちゃん……」


「何?」


「あなたって……」


 何やら真剣な顔でプルプルと震えだすセレスにアズはちょっと恐怖心を抱く。すると突然がばっと勢いよくリオンに抱きつき、


「怒った顔も可愛いぃ~♡」


「!?」


 顔を綻ばせてリオンに頬ずりするセレスに驚愕。アズは動揺を隠しきれなかった。


「さっすが私の妹よねぇ。姉さん鼻が高いわぁ」


「ちょ、姉さんっ!人目を気にして!……っていうかこういうことしないでっ!」


「なぁに照れちゃって~。そんなところが余計に可愛いわぁ」


「……」


 近親相姦……というやつなのだろうか。言葉だけなら聞いたことはあるが実物を見るのは初めてだ。


「まあ、これが変質的と言われる副看守長の正体。女好きで大の男嫌い。彼女の言う“むさくるしい”や“男くさい”の意味は=男らしいってこと。つまり男らしい男は嫌いで女らしい男が好みなわけ。リオンを純愛してるのは彼女に言わせれば姉妹愛ってことらしいけど……変質っていうかここまで来ると異常でしょ?」


 ね?とにっこり笑うウィル。どう答えていいかわからなかったので、アズはとりあえず引きつった笑みを浮かべただけだった。



 脱走(?)したセレスをリオンが連れて帰り、とりあえずその日は終わった。そのあともちょこちょことセレスがアズに会いに来たり。またもリオンには何の一言もなく出てきたようなのですぐに見つかってすぐに連れ帰られるパターンばかりだったが、そのおかげでリオンとも親しくなったというのもある。

 もしかしてリオンに一言もなく勝手にいなくなるのは、リオンに探しに来てほしいからなのかもしれない。姉の立場にあるアズはそんなことを思った。ユズがリオンの立場だったら、絶対に「お姉ちゃんいい加減にして!うざい!!」とかキレそうだ。

 ……うん、絶対キレるかな。(遠い目)






 それから、混沌の覇者が目覚めてから一度も、シャドウが現れたと言う報告は一切なくなった。


 嵐の前の静けさ、とでも言えばしっくりくるかもしれない。ゼノもアリスもそう思っているようで、なんとなくガーデン全体がピリピリしている。ノワールも目立った動きを見せないので、こちらも表だって動けないでいた。


 なので、アズは今こうして簡単な任務に就いて、毎日を忙しく過ごしていた。動き回っていれば何も考えずに済むし、嫌なことも思い出さなくていい。アズは進んで任務を次々と受けて行った。


 今回受けた任務は“探し物”。依頼人との待ち合わせ場所は、ここ、ルディアナ王国の居住区のある東通り。先ほどその依頼人と会ってきたのだが……今回の任務は少々骨が折れそうだった。



 東大陸中心に位置する、王都――ルディアナ王国。東大陸全土を総べる国だけあって、国の大きさが半端ではない。


 このルディアナ王国は、5つの地区に区分され、それぞれの地区で風景がガラっと変わるのだ。


 まずは、ルディアナ王国の玄関口の南通り。ここは主に商業区で、飲食店や雑貨店、花売りや土産店などいろいろあり、観光客や旅人の憩いの場として賑わっている。この通りからまっすぐ進んで行くと中央公園という場所にたどり着く。とても大きな噴水が目を引く中央公園からまた東、西、北……と別れる通りがあり、東に進めば居住区。西に進めば工業区。そして北に進めばルディアナ城に行けるのだ。


 解りやすい大きな通りだからと言って侮るべからず。その大通りからいくつも伸びる細い路地や裏通りがまた複雑で、一歩入れば自分の位置さえあっという間に見失ってしまうのだ。ルディアナ国民であれば迷う事もないのだろうが、外から来た者や観光客なんかが間違って入ってしまえば即効で迷う。現にアズも、クラウスとの任務で3時間ほど迷ったことがあった。無線機を使っているにも関わらず、だ。



 そんなルディアナ王国の中を早足で進むアズは、今日の任務を含めると5回目の入国。さすがに回数を増やすごとに自然と頭の中に地図と言うものが出来上がるのであって、今どこにいるのか、どこへ行けばどこへ出るのか、という事が解ってくる。


「えっと……西門へはどう行けば近道かな」


 大通りは人でごった返しているので、歩きやすい裏路地を進みながらアズは辺りを見回した。すると、


「迷ったの?」


 首元から可愛らしい声がして、アズは立ち止った。


「迷ってないよぉ。リリムこそ不安になったんでしょ?」


「なってないのよ!リリムはちゃんと解ってるんだからぁ!」


 くすっと笑えば髪をかき分けてリリムが頬を膨らませた顔を出す。


 ロックドラゴンの任務で拾って(?)以来、リリムはアズと行動を共にしている。普段は他の人に見えないように光の球体となってアズの肩、もしくは後ろ首の髪の中や頭の上が彼女の居場所となっている。アズの分からないことを解説してくれたり色々とアドバイスをくれたりと、ヴェールとはまた違う頼れるパートナーとなりつつある。


「ふうん?じゃあ案内してくれるよね?」


「た……たしか、あっちなのよ!」


 ずびし!と西門とはまったく別方向を指差して冷や汗を流すリリムに、アズは苦笑して歩き出した。



 今回の依頼人は恰幅のいい貴族街のマダムで、目にハンカチを当てて号泣しながらアズに抱きついてきた。


「どうか……どうかわたくしの可愛いムムちゃんを見つけて下さいましぃ~!!……いなくなってもう3日。もう3日目ですのよ!今頃お腹を減らせてわたくしを恋しがって泣いてるに違いないですわ!ああ……ムムちゃん、ママもあなたの事が心配で心配でお食事も喉を通らなくってよ……今どこに……うわああぁぁぁんっ!」


「ママ、そんなに泣かないで、ね?たかが猫だろう?」


 マダムの隣に寄り添うように立っていた幸薄そうなげっそりした男性が呆れたようにそう言うと、泣いていたマダムは目をカッと見開いて凄い剣幕で怒鳴った。


「たかが猫じゃないわ!わたくしにとったらあなたなんかよりも大切な大切な猫なのよ!?2度とそんな事言わないでちょうだい!」


「わ……わかったよ」


 どうやらマダムの夫らしい男性は引き気味に謝ると、マダムの剣幕に驚いて立ちすくんでいたアズにこっそりと耳打ちして、


「これ。持って行って。絶対に役に立つから」


 と囁いて、真っ赤なシルクの布を手渡した。


「これは?」


「ママがムムのために買った超高級ハンカチ。猫がそんなもの使うわけないのにね。……今はママが愛用してるからママの匂いが染みついてる。これを使えば絶対に捕まえられるから。お願いね」


「わかりました。お借りします」


 きっと大好きなマダムの匂いを嗅がせて捕まえろ、という事なのだろう。これ以上話し込んでいたらマダムの涙が枯れてしまいそうだ。アズは2人に会釈すると急いで猫を探しに走り出した。


 ムムちゃんの特徴は、全身真っ白のペルシャ猫で、普通のペルシャよりは少しふっくらしているのだそう(マダム情報)。首に金の装飾をあしらった赤い首輪をしているそうなので、その情報を頼りに聞き込み調査を開始した。


 ……そして、案外あっさりと居場所を聞き出せた。


 中央公園にいた老夫婦の話によれば、赤い首輪を付けたペルシャ猫とは西門の近くですれ違ったそう。急がなければ西門を通過して外へ出てしまうかもしれない。そうなってしまえば追いかけるのは困難だし、なにより外には野生動物がいる。もしテリトリーに入ってしまえばどうなるかわからない。




 そんなわけで、アズは西門目指して裏通りを全力疾走していた。


――へえ、じゃあ、もしかしたら外に出ちゃったかもね。


 一緒に来たヴェールの念話が頭の中に響いた。冗談ではない発言にアズは顔をしかめる。


――だから、ヴェールも早く合流してってば!今どこにいんの?


――……ん?や、俺も俺で今忙しいからさ~?もうちょっとしたらすぐに追いかけるって。


 なんだか答えるまでに妙な間があったが、待ってる時間も惜しいので仕方ない。アズは溜息をついた。


――じゃあその用が終わったらすぐに来てよ。


――りょ~かい。


 念話を切り、アズは目の前に見える高い塀を見据えて足に力を入れた。助走をつけて一点に集中し、「跳ぶよ」リリムに一声かけて塀の数歩手前で地面を蹴った。


「よっと」


 飛び越えることなく一旦塀の上で着地し、そのままの勢いでもう一度ジャンプ。向こう側の建物の屋根まで跳び、猫のように着地した。


「よし。いい感じ」


 自己満足してふむ、と頷き、「くらくらするの~」と目を回しているリリムに苦笑してそのまま屋根の上を走り出す。この一ヶ月でだいぶ力のコントロールも出来るようになってきた。これもラムの実の成果だ。アズは協力してくれた皆に心の中で感謝した。



 西門に続く大通りが近くなった。アズは手近な路地を屋根の上から覗き込むと、下に人がいないことを確認してひらりと飛び降りる。高さからすると3階ほどあるだろうが、この高さから飛び下りてもさほど問題ない。どういう体勢を取れば体に負担がかからないか、という事が自然と解るようになり、この世界に徐々に適応しつつある。よろける事なく綺麗に着地を決めると、そのまま小走りで大通りに出た。


 工業盛んな西通りに出て、外へと続く西門目指して人の流れに乗る。ルディアナは東、西、南に3つの大きな門があり、国民や外から来た人々はここから出入りをしている。ムムが発見されたのは資材や運搬を担当する獣や竜なんかが頻繁に出入りする搬入口である西門なのだが……辺りを見回してみても白い猫どころか白いモノさえ見当たらない。


「まさか外に出ちゃったとか……」


「だったらまずいのよ」


 嫌な予感がする。アズはとりあえず門の近くで談笑している作業服を着た男性2人に声を掛けることにした。


「あの、すみません。ちょっといいですか?」


「お?なんだい、どうした?お嬢ちゃん」


「えっと、ここらへんで白いペルシャ猫を見かけていませんか?捜しているのですが……」


「猫ぉ?こんなとこじゃ見かけねえが……」


「おい、あれそうじゃないか?」


 話をしていた男性ではなく、隣にいたもう1人の男性が門を指差してそう言った。見れば、人の足元を縫うようにして門の外へと消えていく白い塊が――。


「ああぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」


 それを確認してアズは絶叫。男性にお礼を言うのもそこそこに急いで駆け出した。


「あ、あ、ありがとうございました!」


「おう。さっき外でハイノウルフの群れを見かけたから気ぃつけていけよー」


「はい!」


 大きく頷いて、アズは門を目指して全力疾走した。


 ハイノウルフとは、その名の通り灰色をした狼のこと。このあたりではよく見かける獣族の一種で、体の大きさは大型犬ほどある。4~5匹の群れを作って行動するのだが、こんな大勢の人のいる国の近くにまで来ているなんて……。


 門の外から入ってきた大きなストロスドラゴンにぶつからないように避けながら外に出る。立ち止って辺りを見回すと、道の脇を通り過ぎててってと林の方に歩いていく白い塊を見つけた。


「見つけた!」


 白いから見失うこともないだろうが、いったん視界から外れてしまえばまた見つけるのに苦労する。それにこのルディアナ城の周りは人の手が入っていない自然をそのまま残しているので当然野生動物も自由気ままに暮らしている。一旦人の作った道から外れてしまえば襲われる危険もあるということだ。そのため、先ほどの男性はハイノウルフがいると忠告してくれた。道から逸れたせいで野生動物に襲われてもすべては自己責任。


「アズ、追いかけるの?」


 リリムの問いかけに力強く頷き、「当然行くよ!」と言って草原の上を駆けだした。走り出したアズの肩から飛び立ち、林の奥に消えてしまった猫を先行して追いかける。


 リリムの光を追えば見失う事もない。

 アズは辺りに気を配りつつ、リリムの残した光の粒子を追って林の中へ入っていった。



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