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■ プロローグ
その声を聴いた瞬間から私は愛してしまったのだ。
無条件にただ愛してしまったのだ。
彼は天から授けられた最期の私への贈り物だと直感した。
人生も折り返し地点に差し掛かろうとしている女にしては
いささか陳腐だと自分でも思うが、私はこの直感を素直に受け止めた。
これから先、どのような運命が待ち受けていようとも彼の全てを受け入れよう。
彼を信じ、愛し続けようとすでに心が決めていた。
同時に私は彼がいつかこの手から飛び立つことを予感していた。
彼の背中には薄羽の翼が生えている。出会いの瞬間から私にははっきりと見えのだ。
だから「愛」などという言葉で彼を縛ってはいけない。
いつの日か彼が羽ばたく時が来たら惜しみなく、この手から空に放そう。
彼が飛ぶべき空に見送ろうと、私は自分に誓った・・・・