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転生の輪…①

「御坊っちゃま!!こんな所でなにをなされているのですか」


「なに、って……。友達と遊んでるの」


「遊んで…――ッ!」


ヒィ!!と喉の奥で悲鳴をあげたその人が尻餅を着いたのは覚えている。そう、その人は僕の乳母だった。小さい頃から僕を育ててくれた母親替わりの人だ。残念だけど、僕は皆が持っているほど小さい頃の記憶がない。記憶喪失とかいうものでもない。よく言われてた。『いつも上の空だった』って。それが原因なのだろう。多分この日もそうだった。気付いたら、彼女が尻餅を着いていて、僕を見る彼女の目に畏怖が灯っていたこと。断片的にある記憶の中で最も古い最初の記憶。



――初めて死を感じた記憶



僕は手を真っ赤に染めていた。しかも自分のじゃない。さっきまで言っていた友達だったものだ。あとから知ったのだが、どうやら過去にも同じような事をしていたらしい。屋敷の女中が話していたのをたまたま聞いた覚えがある。今となっては話を結ぶ事が出来る内容だったが、当時の僕にはチンプンカンプンだった。なにせ字で書くとやたら画数が多そうな単語が飛び交っていたから。



――器とか暴走とか憑依とか呪怨とか



要は僕の存在が危険だったっていう事だ。小さいながらも分かった。屋敷に住む誰も彼もの僕に向ける視線に“濁り”があったからだ。


「“また”ですって。次は裏の方で劉飛―ラウフェイ―様と遊んでいる時に目の前で…」


それをたまたま聞いてしまった最中、その雑音を書き消すように包まれた。


――暖かい


前にも後にもそれっきりの感覚。この時、過去にも同じような事をしていたと知ったのだ。これは同時期に知ったものだが、その時に感じた彼女の温もりはまだ覚えている。包み込むように抱き、震えていた。何も知らなかった僕は『ヨシヨシ』と能天気な事を言ったような気がする。

後に乳母の彼女は屋敷を出ていった。

という事になっている。大人の事情って事。僕が手にかけたソレが引金なんじゃないかな。我が子同然か、それ同等の愛情を注いで育てた子供が、目の前で“殺し”をして“遊んでいた”とか言ったのだ。さぞかし落胆したんだろう。

それからだった。僕が不変的な日常を求めたのは。


方向を判定できない空間とふわふわした感覚。地に足が着いていない、上下の判断が出来ないそこは、まるで死後のセカイを感じさせる所だった。



――リンクはまだ無理か



頭に響くのだけれど反芻するだけでそれは何処にも届かない。その声に覚えはない。だけど引き抜かれるような感覚と共に、僕の意識はこことは違うセカイに旅立った。



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