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戦闘開始


晴れ上がった空に入道雲、

じりじりした暑さと時折吹きすぎる生暖かい風。

「これより、ゴールデンビートルズ対青空決死隊のバトルを始める。」

「一種目め、ポルデリート!」

「いざ、神妙に勝負!」

夏真っ盛りの今日、過去最大の張り場争いはとうとう幕を開けた。


張り場争いで最もよく行われる種目の一つとされ、

時には運によって勝敗が大きく左右することもある、

市販のカードを使って繰り広げられる壮大な頭脳戦。

つまりトランプの神経衰弱の応用。

それが、ポルデリート。

この勝負が、ほとんど俺の腕にかかっていると言っても過言ではない。

責任は大きい。

全員で円になり囲っているのは、バラバラに散らばったたくさんのカード。

その数、200枚。

この中からたった一組ずつしかない

同じ絵柄のカードを探し当てなければならない。


「じゃん、けん、ぽんっ!」

いにしえより伝わる公平な儀式によって順番はこうなった。

ユズ→タケ→じんぐうじいぶき→ニシ→きさらぎかなた→いばらすすき→ツル→俺。

どうやら運はこちらに味方しているようだ。

一番手のユズは頭の働きは鈍いが、天性の強運の持ち主。

滅多に当たることのない一番手にうってつけの配役。

そのあとに青空決死隊の三人が続かなかったのが残念だが、まあいいだろう。

 あとは座り方だ。

このゲームの原則として、全員がカードを引く順番で円になって正座、

というものがある。

ここでも運はあった。

この場で唯一の女子であるいばらすすきのとなりに座るのは

チーム自慢の美男子、ツル。

男の俺から見てもアイツのルックスはルール違反だ。

いばらすすきがなびかないはずがない。

もしかすると集中力が切れて思わぬミスをしてくれるか、

はたまたこれから先の情報提供者に寝返る可能性もないでもない。

そして極めつけは、この俺がラストに回ってきたというところか。

ユズの強運でカードを稼ぎ、俺の記憶力で、取れるカードを全てかっさらう。

ツルの存在も大きい。

この勝負、勝ったな。



ゲームはユズの2連続先取から始まった。

いつものことながら感心する。

200枚のカードの中から何の情報もないまま

勘だけを頼りに二組も当ててしまうのだから。

それからは何の進展もないまま一巡目が終わった。

さすがにこの少ない情報の中でカードを当てることはできない。

俺の出る幕はまだないようだ。

二巡目、三巡目と、どんどんカードはめくられていったが、

ユズが二回に一回くらいの確率で当てる以外には

誰もカードを取ることはできなかった。

そして、ゲームは五巡目にさしかかり動きを見せた。

ユズが外したカードをタケがフォローしたのだ。

タケ、ナイス!

俺は心の中でガッツポーズ。

しかし、じんぐうじいぶき、いばらすすきも一組ずつ取って追い上げてきた。

カードもけっこうめくられてきている。

そろそろだな。

記憶を探る。

五巡目のラスト、俺の番がやってきた。

大丈夫、いける。

今までのカードの出現状況を片っ端から思い出し、

取れるカードを全てめくっていった。

収穫は、八組。

これで青空決死隊と大きく差をつけた。

よし、いいぞ。

みんなから称賛と驚嘆のまなざしを浴びつつ、俺はほくそ笑んだ。

しかし次の六巡目で、俺は自分の甘さに気づかされることになる。

ニシが外したことから始まった六巡目は、

誰もカードを取ることなく進んでいった。

そして、三番手である青空決死隊リーダーのじんぐうじいぶきの番。

そこで、事件は起こった。

自分の足下にあったカードを引き、

直前にタケが引いたカードと合わせるじんぐうじいぶき。

俺もそこまでならマグレだと思ったさ。

でも彼の手は止まらなかった。

さらに二組目、三組目と次々にカードを取っていく。

その数、五組。

それは、俺の頭がインプットしている現段階で取れるカードの最大枚数だった。

冷たい汗が頬を伝う。

まさか、アイツも今まで出たカードを全て記憶しているというのか?

その通りだった。

何回順番が回ってきても、じんぐうじいぶきは取れるカードの最大枚数を持って行く。

それにともない、俺が取るカードも少なくなる。

もはや、この勝負は俺の一人勝ちにはならなくなってしまったようだ。


カードも残すところあと96枚。

ゲームは中盤を迎えていた。

ポルデリートはここからが速い。

俺がいっぺんに大量のカードを取っていくからだ。

いつもなら。

ただ、今日は違う。

頭の切れるやつがもう一人いるせいで、カードもいつもの半分ずつしか取れない。

しかし、負ける心配はしていなかった。

あることに気づいてしまったからだ。

それは、カードを引く順番。

俺からじんぐうじいぶきまでの間には、

ユズ、タケ

の二人。

じんぐうじいぶきから俺までの間には

ニシ、きさらぎかなた、いばらすすき、ツル

の四人。

自分の前にカードをめくる人数が多い方がたくさんの情報を得られる。

つまり俺の方がたくさんカードを取れるのだ。

さらに、こちらには強運のユズがついている。

負けるはずなどないのだ。


10分後。

「勝利チーム、ゴールデンビートルズ」

五人の歓声があがった。

一つ残念だったのは、

いばらすすきがツルに興味を示さなかったこと、そのくらいか。


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