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No.4 再構築

No.0は己の内側に意識を向けた。 地、水、火、風、そしてそれらを調和させ束ねる「光」の奔流が、血管を巡る血よりも鮮明に彼の「器」を満たしている。

その光の奔流の中で、首の付け根に潜む「異物」が、黒い澱のように不快な拍動を繰り返していた。施設へ現在地を送り続ける追跡の信号。No.63をその場に縫い止め、死へと追いやった呪いと同じ仕組みの鎖だ。

「……これがある限り、私は自由ではない」

No.0は、自分の存在を定義し直すことを決意した。 与えられた人形の身体を捨てるのではない。この「器」そのものを、魂の形に合わせて再定義するのだ。

彼は水晶の短杖を介して、自身の無色の魔力を一点に集中させた。 脳裏に焼き付いているのは、先ほど命を賭して自分を救ったNo.63の姿。激しく燃える赤、生命力の奔流、そして最期に見せた誇り高い笑み。

「お前のような、強い意志を持った生命に……」

放たれた魔力が物理的な肉体を分解し、再構成していく。 眼の前には、一時的に魔力によって編み上げられた、No.63を模した新たな「身体」が横たわっていた。その燃えるような赤髪の身体に、No.0は自らの魂をゆっくりと移し替えていく。

魂が新たな器へと宿った瞬間――。

パチパチと弾けるような音とともに、象徴的だった赤い髪が、No.0の持つ「無色」の魔力に染め上げられていった。 それは、施設で見てきたどの人形の白とも違う。 星の光を反射する氷のように透き通り、月光を浴びた雪のように輝く「白銀の髪」。

目を開けると、先ほどまで感じていた首の不快なノイズは完全に消えていた。 追跡装置も、識別信号も、自分を「No.0」として定義していたすべてが、古くなった殻のように脱ぎ捨てられた。

新しく手に入れた指先を動かし、その白銀の髪に触れる。 この身体にはもう、誰にも縛られない。 彼は、自分自身の意志で再誕したのだ。

新しく作り上げた身体は、まるで自分の意思そのものが肉体を得たかのように、淀みなく魔力を伝達した。

「……これが、私だけの力」

No.0は掌を空へ向け、指先を微かに動かす。それだけで、大気は彼の呼応を待っていたかのように激しく鳴動した。先ほどとは比べ物にならない、大気を断ち割らんばかりの暴力的なまでの風が、彼の周囲に渦を巻く。

彼はその風を、破壊ではなく「葬送」のために使った。

「忌々しい施設を、土の中へと覆い隠せ……!」

No.0が鋭く叫び、水晶の短杖を大地へと突き立てると、地響きが世界を揺らした。地属性の魔術が地殻を激しく隆起させ、暴風がかき集めた莫大な土砂が、巨大な波となって崩れた施設を飲み込んでいく。

ゴォォォォ……という地鳴りが、かつての絶望と惨劇の跡を塗りつぶしていく。 やがて訪れたのは、何事もなかったかのような静寂。 そこにはもう、彼を「番号」で呼ぶ者たちの遺体も、非人道的な実験器具も、そして同胞たちの無残なパーツも見えない。すべては等しく、厚い土の下へと葬られた。

ここは、名前も持たぬ一人の生命が生まれ、そして死んだ場所。 No.0は、目の前に出来上がった巨大な土の丘を静かに見つめた。

「さらばだ。……私の、かつての居場所よ」

風が吹き抜け、白銀の髪をなびかせる。 彼は、自分が何者でもない「空っぽの器」であることを自覚しながらも、その手に握られた短杖の重みを確かめた。これから行く先が「マシな世界」であるかどうかは分からない。それでも、彼は歩き出さなければならない。

彼を逃がした「赤」への誓いと、新しく手に入れた「白銀」の決意を胸に。

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