設定あれこれ
「設定」というのは、キャラクターにしても世界観にしても「ストーリー」を作る為の材料だと思っています。
「ぼくのかんがえたさいきょうのしゅじんこう」でも「なんでもおもいどおりにできるせかい」でも何でもいい訳ですが。
それに対し「ストーリー」というのは、「設定」を材料にして生まれる流れ、キャラクターの心情の変化だったり人間関係のアレコレだったり、世界が変わっていく様子だったりという「動き」ですね。
で、せっかく考えた「設定」は全部見せたいということで、ついつい「これはこういうことなんだよ」と説明したくなるというものです。
しかし、「設定」は「材料」に過ぎないので、そればかりを並べるということは、料理していない「材料」だけをゴロゴロと並べて「さぁ食え」と言っているようなものなんですよね。
同じ「材料」でも「料理」の方法によって全く異なるものができます。
「設定」を利用して「ストーリー」を作るのも、これに通じるものがありますよね。
異世界に転移してチート能力を授かった主人公、だけでも、「料理」の仕方は作り手によって千差万別だと思います。
考え出した「設定」を書き出すだけで満足せず、ちゃんと「料理」しないとな、と常々自戒しています。
異世界転生あるいは転移、性転換、他人との精神 (魂)入れ替わり、記憶喪失にタイムリープ……その他様々な「設定」があると思います。
ちょろっと例に挙げたものだけでも、ワクワクする要素です。
しかし、「この設定、何の為に入れたんだろう?」と感じる作品も散見されます。
先に述べた「設定」は、主人公に何らかの変化が起きたものですね。
これらの「設定」を使う醍醐味の一つは「主人公のリアクション」かと思います。
突然、これまで住んでいた世界から別の世界に飛ばされたり、予告なく性別が変わっていたり、自分と他人の精神が入れ替わったり、あるいは自分に関する記憶が全て消えていたり、時間が巻き戻っていたりしたら……
普通であれば、驚きますよね。
驚いた後に「ラッキー!」と思うか「困った……」となるかは、そのキャラクターによると思いますが。
読んで「あれ?」と思ってしまうのは、主人公が自分の身に起きた変化に対し、動じることもなく当たり前のように受け入れてしまうものです。
「順応性が高いキャラクターだから!」と言われれば、それまでですが、たとえば自分一人が異世界に飛ばされたのに、帰りたいとか、家族や親しい人に再会したいと思ったりしないのかなどなど、ちょっとモヤっとするものがあります。
主人公に特殊能力を持たせるだけであれば、別に異世界転生もしくは転移じゃなくても、普通に(?)生まれつきとか改造されたとか、現地(舞台になる世界)出身でもよくない? とも思ってしまったり。
あと、異世界転生・転移ものの醍醐味として「知識チート」があると思います。
飛ばされた先の世界にない知識を持ち込んで改革したり戦いに勝利したりする、気持ちいいパターンですね。
しかし、前世の記憶があるのなら、そこで培ったスキルや知識がある筈なのに、そういったシーンが何ひとつないと、「別に転生者じゃなくても問題ないのでは?」と感じます。
もちろん、「知識チート」なしでも、突然見知らぬ世界に放り込まれた主人公がマイナスの状況から這い上がっていく様を描く話もありますし、結局は「描き方・演出」なのかもしれませんが。
要するに、異世界転生・転移に限らず、読み手に「その設定、必要?」と思わせてしまうのは勿体ないなぁという話です。
設定だけではなく、キャラクターにしても、読み手から「こいつ何しに出てきたの?」と思われるのは可哀想なので、何らかの役割を持たせてあげたいものですね。
とはいえ、作者も「それは、カッコいいからだ!」という理由で設定をくっつけたり、好きな属性持ちのキャラクターを追加するケースは普通にあるので、特大ブーメランが刺さってますけどね。