44話 ボランティア部、緊急招集
翌日の昼休み。
なんとも珍しい時間帯にボランティア部の面々が部室に勢揃いしていた。
もちろん自分が呼び出したのだが、その理由は昨日依頼を受けた田辺の件だ。
大体の内容を確認したまでは良かったのだが、その後の話を聞いていく内にどうしても急がなければいけない問題が発覚。早急な打ち合わせが必要だと思い急遽皆に連絡をした訳だ。ともあれ、全員が来てくれたことには感謝しなければならないだろう。
(しかしながら田辺の奴……いくら何でも急すぎるだっての!)
「皆、昼休みに集まってもらってごめん。グループのメッセージでも少し触れたけど、昨日ボランティア部に依頼があったんだ。ただ、どうしても早めに皆に伝えておきたくてさ? じゃあ、春葉。頼む」
「了解~です!」
依頼主は2年4組田辺健二。野球部所属。
依頼内容は、付き合って1年になる彼女へ送るプレゼント候補の選抜及び、情報収集。
対象者は1年6組の九条弥生。ソフトボール部所属。
同じ中学校で田辺が高校進学する際に告白して付き合い始めた。
「以上となりま~す」
こうして昨日田辺から聞いた内容の説明が終わると、最後に俺は最も重要なことを口にした。
「って訳なんだけど、問題はその記念日なんだ」
「んー? なになにー?」
「ねぇ、もしかして日にちが近いとか?」
(流石下塚さん。察しが良い)
「あぁ……3日後だ」
「「「3日後~?」」」
3人が見事にハモるのも無理はない。昨日話を聞いた俺と春葉も全く同じ反応だった。
「ちょっと待って? 今日木曜日よね? 3日後って、記念日は日曜。でも、土日って学校休みよね」
「九条さんのー情報集めるのにー、実質今日と明日しかないってことー?」
「1日と半日……ですか……」
皆の言う通り記念日は日曜日だ。ただ、土曜日は学校が休みとなると、実質動ける日は今日と明日だけと考えた方が良い。
もっと前から相談に来て欲しかったものだが、田辺としては依頼をしたい。ただ、クラスメイトということでどこか恥ずかしい。そんな板挟み状態のまま、結局記念日近くになっても良い案が浮かばず、ようやく決心したということらしい。
そんな感情も分からなくはない。
それに意を決して依頼をしてくれたのなら、なんとか応えてあげたいと思うのが普通だろう。
とはいえ、ことは一時を争う。
「あぁ。記念日まで時間がないのに勝手に引き受けてごめん。ただ、やっと来た2件目の依頼。誰がどうであれ、依頼主の力になれるなら俺は全力を尽くしたいと思う。どうかな?」
「まぁ、内容的には問題はなさそうだし。私は全然協力するよ?」
「アタシもー全然オーケー」
「僕もです!」
(よっし。皆サンキュー)
そんな皆の言葉に安心した俺は、早速今後の流れの説明を始めた。
「了解。じゃあ、昨日俺と春葉で大まかに決めた流れを発表するよ」
この依頼は大きく分けて2つの工程に分かれている。
まずは九条さんの欲しがっている物の調査。
そしてプレゼント候補の選抜。
プレゼントの購入については、土曜日に野球部の部活が終わり次第行くことになっている。田辺が誰かについて来て欲しいと話していた為、とりあえず俺かクルミが付き添うことにした。
この点については、女子へのプレゼントなら誰か同性が付いて行った方が参考になるのではという声もあったのだが、ボランティア部の女子と田辺が一緒に行くことは断固反対した。
女の子と2人で彼女の誕生日プレゼントを買いに行って、その現場を九条さん本人に目撃される。または九条さんの友人に目撃される。それが原因で関係が壊れてイザコザが起こるなんて、様々な作品で目にしたことのあるパターンだ。
それに田辺+女子複数だとしても同じこと。男女複数での買い物も、その様子を見れば怪しさを感じてしまうだろう。
もちろん必ずそういったことになるとは限らない。ただ、依頼主のサプライズ感を出したいと言う考えを尊重するなら、少しでもリスクを減らすに越したことはないだろう。
ということで、男だけでの買い物を提案した。
(でも、問題はこっちなんだよな)
この依頼で1番の問題なのが、プレゼントを選ぶための情報収集だ。
九条さんが欲しいものをプレゼント出来れば1番良いのだが、田辺が直接聞いたらサプライズの意味がない。大体そんなことをいきなり聞かれて、欲しいものを素直に話すかどうかと言われるとそれも微妙なところだ。
つまり、どうにかして本人の口から欲しいものに関する言葉を聞く。
それが出来なかった場合、本人の好きなことや物に関係する代物で検討する。
この2つが最重要課題なのだ。
とりあえず、情報収集の本丸は同じ1年のクルミにお願いすることにした。下塚さんは生徒会1年の笹竹や菖蒲を通じて、不審に思われない程度に情報収集。
天女目さんは、なんとも怪しさ漂う独自のルートで探ってみるらしい。
まぁ、この際九条さんにバレなければ問題ないだろうと各々にお願いをした。
俺と春葉については、情報収集に人員を割き勘付かれる危険性を考慮し、皆からの情報を受け取り、まとめ上げる役目を担うことにした。
こうして上手い具合に役割が割り振れたところで、俺は皆に声を掛ける。
「じゃあ、結構難易度高いかもしれないけど、皆よろしく頼む」
「了解~!」
「なんかスパイ映画みたいでワクワクするわね?」
「バレないよーにねー? 秋乃ー」
「うぅ……頑張ります」
(頼むぞ~皆!)
こうしてボランティア部、2件目の依頼が始まった。
次話も宜しくお願いします<(_ _)>




