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見た目がチャラい井上四季は、なぜか皆に誤解されてる  作者: 北森青乃
第2章 ボランティア部、始動編
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43話 光明が見えたチャラ男

 


(……困った)


 ボランティア部部室。

 もはやその光景にも慣れつつある中、俺はいつも通り椅子に座って頭を抱えていた。

 その理由はズバリ再び暇となったボランティア部の現状。

 生徒会からの依頼をきちんとこなしたからには、その噂を聞きつけてどこからか依頼が来るものだと思っていたのだが、残念ながらここ1週間程なんの音沙汰がない状態だった。


 続々と依頼が舞い込むだろうというのは甘い考えだったのだろうか。

 そう思いつつも、自分には別に思い当たる節があった。


「やっぱ先輩だよなぁ~」

「ふふっ? もうそれ言うの何回目?」


 思わず零れた言葉に、せっせと部室を掃除している春葉が口を開く。


「いや。だって絶対その影響もあるだろ?」

「まぁねぇ。なんたって四季は、柔道部部長に頭を下げさせた男だもんね?」

「はぁ……」


 柔道部部長がチャラ男に頭を下げる。

 その話題は瞬く間に校内へと広まっていった。

 案の定クラスでも話題となったのだが、流石そこはチャラ男が所属している2年4組の面々。事情を説明すると、


『なんだ~そういうことかよ』

『てっきり女の子だけじゃなくて岩田先輩をも懐柔したのかと思った』


 何やらツッコみ所は多々あったが、思いの他ほとぼりが冷めるのは早かった。

 しかしながら他のクラス……というより、特に他学年の生徒らの反応は全く相反するもので、廊下を歩くたびに向けられる視線の多さは増すばかりだった。

 1週間経った今となっては、騒がしさも鳴りを潜めつつあるのだが……俺に対するイメージは校内でパックリ2つに分かれているらしい。


「だってさ? 普通に考えたら、別に悪いことした訳じゃないだろ?」

「まぁ、普通に考えたらね?」


 あの一件以来、先輩の俺に対する反応は目に見えて変わった。

 頭を下げた話は一斉に広まったもので、特に同学年でもある先輩方はこぞって岩田先輩に真相と理由を聞きに行ったらしい。

 すると岩田先輩の口からは、妹の件で世話になった。あいつは良い奴だ。

 そんな言葉が飛び出たそうで、事実廊下ですれ違えば何とも見慣れない笑顔を見せながら挨拶までしてくる様になった。


 まぁそんな状況を見れば、普通は先輩の言うことを素直に信じて、新学期早々から続いたチャラ男とのゴタゴタは勘違いだった。チャラ男は実は良い奴だったと思うだろう。まさに2年生が良い例だ。

 ところが、ことはそう上手くはいかない。


「だよな? じゃあ3年と1年の間で広まってる話はどうなんだよ~」

「ははっ。先輩、四季への対応がガラリと変わっちゃったもんね? 何か裏があるって思われても仕方ないかな?」


 どうやらその変わり身の早さに3年と1年は疑問を感じたらしい。特に先輩の友人らは今までの岩田先輩とはあまりにも違う姿に、妹のことで脅されているのではないかという疑惑を抱いたそうだ。


 だからこそ、やたらと俺を褒めて、先の真相も隠しているのではないかというのが3年と1年の間で広まっている話らしい。

 クルミはもちろん、生徒会の笹竹と菖蒲から話を聞いた時は心底ガッカリしたものだ。


「嘘だろ? だって先輩本人が桃さんの件で世話になったって、本当のこと言ってるんだぞ?」

「だから、逆にその潔さが不信感を増長させてるんだろうねぇ? 岩田先輩って3年でもトップクラスに怖めな存在だったみたいだし? そんな人が、新学期早々揉めた四季のことをいきなりベタ褒めだよ?」


 まさにヤンキーが急に丸くなった瞬間、逆に心配される現象に似たようなものだろうか。

 ただ、こちらとしてはたまったもんじゃない。


「なんだよそれ。ったく、これなら今までの強キャラムーブでいてくれた方がまだマシだったんじゃないか?」

「でも、それはそれで四季嫌じゃない? 妹さん関連で誤解が解けたのは良かったと思うけど……」

「それはそうだけど……はぁ」


(だから依頼も来ないんじゃないか? 先輩を手玉に取っている=恐ろしいって感じで。それはそれでチャラ男とは違った意味で辛いぞ)


 先輩と後輩からは先輩を脅しているチャラ男。

 同学年からは先輩から慕われているチャラ男。

 生徒会からの依頼をこなしたことが霞んでしまう程の現状に、上手くことは進まないのだと落胆する。


「はぁ……」

「ふふっ。あれ? 四季、ドアの所に誰か居る」

「えっ?」


 なんてガッカリしている時だった。春葉の声に思わずドアへと視線を向ける。すると、確かに部室の前に誰かが立っているのが見えた。

 服装的に野球部だろうか。とはいえ運動部は今の時間帯部活をしているはずなのだが、正直今はそんなことどうでも良い。依頼となれば嬉しいことこの上なしだ。


 コンコン


 そして聞こえたノックの音に、俺と春葉は顔を合わせる。そして頷き合うと春葉がドアへと足早に駆けて行った。


(おいおい! お客さんか? 依頼者か? 一体誰なんだ?)


「は~い」

「あっ、あの……ここボランティア部の部室ですよね?」


「そうですよ~! どうぞ中に入ってください?」

「えっと、失礼ま……おっ」

「ん? って! 田辺じゃないか!」


 こうして春葉に招かれ部室へと足を踏み入れたのは、なんと同じクラスの田辺だった。


「よっ、井上」

「部活はどうしたんだ~? 冷やかしならいらないぞ?」

「あっ、四季~? そんなこと言わないの!」


 とは言いつつも、野球部の田辺が放課後にここに居るということは、わざわざ練習を抜け出して来てくれたのだろう。となれば、何かしらの話があるのは容易に分かる。


「冗談だって。そんなこと言いに来るほど、田辺も暇じゃないだろうしな」

「分かってるじゃん!」

「もうっ、びっくりしたよぉ。それじゃあ、2年4組野球部所属の田辺君。こちらの席へどうぞ?」


 なんてやり取りをしながら、シミュレーション通りに来客席へと案内する春葉。その様子を見ながら、俺も移動を開始する。

 こうして椅子に座り向かい合う光景は、何とも恥ずかしさがこみ上げる。ただ、ここを訪れた時点で立派な依頼主に間違いない。

 俺はゆっくりと口を開いた。


「それで? ボランティア部に依頼か?」

「あぁ。たしか相談事にも乗ってくれるんだよな?」

「はい! 個人の相談にも出来る限り真摯に対応いたします!」


「だな。練習抜け出してまで来たってことは、結構真剣なことだと思ってるんだが……」

「まぁその……ちなみに、ここに来たって言うのは……」


「大丈夫だ。基本的にボランティア部の部員しか共有しない。個人情報の保持は最低限だからな」

「信用に関わるから、その点は厳重にしていこうって部長がうるさいもんでねぇ」

「なんだ。ちゃんとしてるじゃん」


(ちゃんとってなんだよ)


「心外だぞ? それで、依頼って?」

「あのさ……笑うなよ?」


「笑わないって」

「えっとな? 俺、付き合ってもう少しで1年の彼女が居るんだ」


(……なんだと? ちょっとムカついた。いや、ここは感情を抑えろ四季)


「ほうほう。もしかして、記念日に渡すプレゼントでお困りとかですかぁ~」

「なっ! なんで分かったんだ? 桐生院さん!」


(合ってるのかよぉ~!)


「えっと、つまり付き合って1年になる記念日に渡すプレゼントの相談って訳か?」

「あぁ。直接聞いたらサプライズ感もないだろ? だから、情報を探ったり協力して欲しいんだ。頼む」


 そう言いながら、頭を下げる田辺。

 本来なら奉仕活動メインの部活を考えていただけに、個人の相談なんてそうそう来ないと思っていた。ともあれ依頼は依頼。さらにはクラスメイトの頼みとあれば、断る理由は見当たらない。


「よっし。じゃあ、この依頼申込書に記入してくれ。あと、こういうことして欲しいってのも出来れば詳しく書いて欲しい」

「えっ? ってことは……」


「あぁ。ボランティア部として依頼受けさせていただきます」

「受けさせていただきまぁ~す!」

「ありがとう! 2人共!」


(記念すべき2回目の活動。しかもクラスメイトの依頼……これは成功させないと!)



次話も宜しくお願いします<(_ _)>

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