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3話 ギャル、襲来

本日3話目の投稿です<(_ _)>(3/4話)

 


「じゃあ、これね」


 教室となんら変わらない様子で、地毛証明書を手渡す端午先生。

 俺はそれを受け取ると、一礼して教室へ向かおうと思っていた。


「ありがとうございます」

「ん? なにかあった?」


 思わぬ先生の言葉に、ついさっき起こった光景が思い出される。

 先輩に言われもない濡れ衣を着せられ、騒ぎを聞きつけた2年生達の注目の的になった。一刻も早くその場を離れたいと思ったものの、その行動は()()()()()()()という決定的な証拠になりえる。つまりいつもの表情で速度で、視線を痛いほど浴びながら職員室まで来たのだ。


 ただ、端午先生に言ってもどうにかなるもんじゃない。ここは至って普通の返事をすることにした。


「いえ。なんでもないですよ」

「そうか。なるべく早く出すんだぞ」


(うおっ……めちゃくちゃ事務的。いや、都合良くクールな先生が生徒の異変に気付いて親身になる。そんな妄想を抱いてはいけないな。職員室と2年の教室があるフロアが同じ2階なんで、道中キツかったなんて言っても、そうか。の一言で終わりそうだ)


 俺はもう1度礼すると、職員室を後にする。

 こうして少しばかりトラブルがあったものの、なんとかお目当ての物を無事に手に入れた。ただ、それからが少しばかり面倒くさかった。

 教室へ戻ろうとしていると、例の状況を見ていた2年生達の視線がめちゃくちゃ痛い。それにところどころから聞こえる声には、思わず心の中で反論してしまう。


 ―――おいおい、さっきの岩田先輩だったよな?———

 ―――見たところ、怪我とかはないぞ? 良く無傷で戻って来たもんだ―――


(どこかに連れていかれたとでも?)


 ―――先輩の妹さん、ナンパしようとしたらしいよ?———

 ―――うそ?———

 ――—本当だって。声聞こえてたもん―――


(あの、全く違います)


 それらを繰り返していく内に、4組へ辿り着くころには精神的にも疲れ切っていた。


(あぁ、やっと戻って来た)


「おい! 井上、大丈夫か?」

「岩田先輩に呼び出されたって本当か?」

「よく無事だったな!」


(えっと、心配は嬉しいけど……ちょっとタンマ)




+++++++++++++++




「はぁ……」


 鞄から弁当を取り出し、広げている最中に不意に飛び出た溜め息。

 もう一生分の溜め息をついた気がする。それほどまでに、午前中は濃厚で疲れを伴うものだった。


 結局あれから直ぐに授業が開始。落ち着いたかと思うと、授業の合間には人だかり。必死に何もなかったと言い続けて、ようやく落ち着いたところだ。

 それに昼の教室はほとんど誰も居なくなる。おかげで昼はゆっくり食べれそうだ。


 京南高校には、立派な学食が存在している。値段も相場よりかなり安く、量も多いことから大多数の生徒は昼に学食を利用していた。

 俺はと言うと、そんな他学年も含めて大勢が集結する場所に行っても良いことはないと判断し、弁当を持参している。いつもは春葉と一緒に食べているのだけど、なんでもクラスで仲良くなった子と学食に行くことになったと連絡があった。同じクラスとの交流は大事なものだ。俺なんかのせいで拒否する必要は全くない。


 それにしても、このストロベリーメッセージZというアプリはなかなか役に立つ。メッセージが会話調に表示されるやり取りのしやすさのおかげで、今や誰もが知っているメッセージアプリだ。


(連絡も快適だな。さて……ゲームでもしながら食べますか)


 俺はスマホを手に取ると、思い思いにおかずを口へと運ぶ。

 春葉と一緒だと行儀が悪いと怒られる為、今日だけの特権だ。


 ―――じゃっ、学食行こうか―――

 ―――はいよ~———

 ―――今日何食べようかな―――

 ―――あんたはいっつも日替わり定食の大盛りでしょ?———

 ―――あっ、アタシちょっと用事あるから、先に行ってて? すぐ追いつくからー―――


 スマホのゲームアプリを起動していると、何やら女子の声が聞こえてくる。このキャピキャピした声は、うちのクラスのイケイケギャル達で間違いないだろう。

 肌や髪色はそこまで派手ではないものの、テンションや話し方や服装はまさにそれだ。とにかく、これで教室には俺1人。たっぷり休ませてもらおうか。


(さてさて、今日のログインボーナスは……)


「ねぇ?」


(ん? って!)


「はっ、はい!?」


 誰も居ない教室で悠々自適にお昼を堪能しようと思っていた矢先に、目の前に現れたのはギャル達の1人。反射的に出た声が、思わずうわずってしまう。


「何テンパってんのー?」


 そんな様子を見て笑い出すギャル。その顔はギャル達の中でも印象深い人物だった。


「いや、いきなり話し掛けられたら驚くだろ? 天女目さん」


 天女目(なのめ)夏季(なつき)。褐色の肌と明る目の茶髪で見た目通りのギャル。すでにクラスでもその存在感は大きく、中心グループの1人で間違いない。


(そんな天女目さんが俺に何の用だ?)


「そっかーごめんごめん。てか、井上って弁当派なんだー」


(いやいや、要らぬ疑念を抱く前にクラスメイトとして仲良くやって行かないと)


「そうだな。いつもは春……、5組の桐生院と食べてるんだけどさ」

「桐生院……あぁ! あの巨乳ちゃんね? わかるわかるー」


 俺の前の机に腰を下ろし、自分の胸辺りをを大きく撫でる仕草を見せる天女目さん。下ネタにも捉えかねない動作をやすやすとしてしまう辺り、流石ギャルだと感心する。


「そんで? 今日、巨乳ちゃんは?」

「新しいクラスメイトに学食に誘われたそうだ」


「あちゃー悲しいねー」

「そうか? クラスメイトは大事だろ。俺のせいで交流できないのは酷だ」

「……ふぅん」


 少し驚いた様子で、俺を見下ろす天女目さん。しかしながら、その視線は上から下まで品定めしているようにも見えて少し怖い。


(えっと、それだけか? だったら早く友達の所に行った方がいいのでは?)


「ねぇ井上?」

「なんだ?」

「アタシと……シない?」


(はい? なんのことだ?)


「しない? とは?」

「もうー、分かるくせに」


 どこか妖艶な笑みを浮かべながら足を組み、自分の人差し指の先を舐める天女目さん。

 この行動で察しろということだろうか。しかしながら、こういう場面での対応は慎重になるべきだ。別に天女目さんを信用していない訳じゃないけど、火のない所に煙は立たない。少しでもおかしなことをしたら、変に誇張される可能性もある。


「いや? なんのことかな」

「本当に言ってるー?」


 その一瞬、時が止まったかのような空気感に襲われる。正直、俺も男だ。天女目さんの言葉が何を示しているのか……さっきの行動を見れば、おそらくそういう行為のことだと大体分かる。

 とはいえ、本気とは思えないし俺の口からそれを言うのは、現状の立場を考えると面倒になりかねない。

 そう思い、俺は静かに言葉を返す。


「本当だよ」

「えー女の子の口から言わせる気? 結構Sなんだー、井上って。恥ずかしがってるの見て興奮するタイプ?」


(まさか……淫乱ギャル!? いや、落ち着け落ち着け。どうせからかってるだけだろう。ギャル特有の残念でしたぁ~パターンに違いない)


「いやいや、そもそもなんで俺?」

「別に? イケメンとシたいだけ。それ以外に理由は必要ー?」


 わざとらしく足を組み直し、首を傾げながら今度は舌舐めずりする天女目さん。


(嘘だろ? まさか本気で!? いやいや、騙されるな俺)


「そもそも、ちゃんと話したのだって今日が初めてだろ?」

「だからーアタシは格好良い人とシたいだけ。それに噂聞いてるよ? すごいテクニシャンなんでしょ? おまけに絶倫イ・ケ・メ・ン」


 その瞬間確信する。18禁漫画で良く登場する、淫乱ギャルは存在するのだと。

 しかしながら同時に申し訳なくも感じる。天女目さんの話すそれは、まるっきり噂の1人歩きなのだから。


「残念だけど、それは違うよ?」

「またまたー」

「本当だよ。それに、お互いを知って色々な順番を経てそういうことはするものだと思うからさ?」


 これはまさしく本心だった。ここまで期待外れのことを言われたら、天女目さんもゲンナリして諦めてくれるだろう。


「あっはぁ。やっぱ良いねー井上。おあずけなんてさ。焦らしプレイってやつ? そんな高等テクニック、アタシにするなんて」


(はい?)


「今日はこれくらいにするよ。でもさ? 今度絶対……シようね?」


 そう言い残すと、教室を後にしようとする天女目さん。

 チラチラこちらを見ながらウインクする姿に、俺はつくづく感じた。


 (あれ? なんかマズくない?)



次話も宜しくお願いします<(_ _)>

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