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28話 準備万端なチャラ男

本日ラストになります!

 


「お~凄いな!」

「本当? 良かったぁ」


 ゴールデンウィークも半ばに差し掛かったある日。

 俺の部屋には春葉の姿があった。そして2人で眺めるのは活動場所のレイアウト図。春葉が俺の希望を聞いて作ってくれたものだ。


 結局自分では上手い具合に考えることが出来ずにいたのだが、試作品の感想を父さんへ伝えに来た春葉が部屋へとやってきた際に、レイアウトの話をしたのがきっかけだった。

 思いがけず春葉がやってみようかと言ってくれたものでお願いをした訳だ。


 教室という構造上、2つの出入り口は活用したい。

 同好会メンバー達が座れるように机やらを配置し、個別の相談スペースもあればいい。その他使用する道具やらを置く場所に服などを掛けるラック。活動記録等を保管できる書庫なんかも配置。

 物を準備できるかどうかは別として、最初からイメージを完成させておけば、部に昇格した時に購入できるかもしれない。


 あくまでイメージのレイアウトなのだが、差し出されたものは俺の希望を完璧に叶えてくれていた。


(マジかよ。凄いな……)


「流石としか言いようがない」

「いやぁ~、ここだけの話パパの力も少し借りちゃったけどね? てへっ」


 春葉のお父さんである(さい)さんは建築デザインの会社を経営している。つまり春葉は立場的に社長令嬢なのだが……正直、春葉も春葉のお父さんもそんな堅苦しい雰囲気は全くしない。実際に昔から春パパと呼んでいて、気さくで優しくて面白い。まぁ、比較対象が父さんとなると余計にそう感じてしまう。


 ともあれ、春葉と春パパが手掛けてくれたと聞くと、この完成度も理解が出来る。それに春葉は謙遜しているが、力を借りたと言っても少しのアドバイスぐらいな気がする。本当のところは分からないが、春葉は昔からなんでもそつなくこなせていた。さらにその性格上、きっとそうなんじゃないかと思う。


「謙遜するなよ。大体は春葉が考えたんだろ?」

「いやぁ、大まかな土台だけね? 細かい部分については……本職さんにお任せしましたよぉ」


「じゃあ、後で春パパにお礼言いに行くよ」

「そんなの全然いいのに~」


「親しい中にも礼儀ありだ」

「そういうとこ本当に律儀だよねぇ。やっぱ似てるよ? 四季パパと四季」


(似ているというか、昔から体に染み込まされたの間違いでは? まぁ、おかげで最低限のマナーは守れる人にはなれたかな)


「それは褒め言葉か?」

「もちろんだよ~? ふふっ」


 そんな雑談を話していると、話題はついに発足となるボランティア同好会の話となった。楽しみと希望に溢れた会話に、テーブルに置かれた麦茶も進む。


「いやぁ、あとは頑張って部活動になれたらいいんだけどねぇ」

「部活動……賛同者10人と生徒会の承認か」

「あと5人どうにかならないかな? 生徒会関係は秋乃に頑張ってもらえたら何とかなりそう」


 生徒会。その言葉を改めて聞いた途端、浮かんできたあの出来事。

 ゴールデンウィーク初日の夜に、山之上公園で遭遇した生徒会長。一応同好会については活動に協力してくれる話でまとまったのだが、その後の要望が物凄かった。

 裸を見られることに刺激を受けたのか、また裸を見て欲しい。せめて下着姿を見て欲しい。ある意味七夕本来の姿なのだろうけど、圧倒されてしまった。

 挙句の果てに、せっかく着ていた服の上着を脱ぎだして迫る姿に『とっ、時々だったら考える!』なんて曖昧な返事をしてしまった。


 結果としてなんとか落ち着いてくれたものの、半ば強制的にストメの友達登録をさせられたり、帰り際の嬉しそうな表情に何とも不安が残る形となった。

 その後ストメにあらぬ画像でも送ってこないか心配だったが、現状あの出来事に関する謝罪と、さっそくボランティア同好会へプラスになることを考えたいという旨のメッセージだけが届いているのは幸いだ。


(偶然も偶然だが、どうしてこうもウチの生徒会役員は個性豊かな人達ばっかなんだよ。もちろんこのことに関しても、春葉には言えないぞ?)


「そうだな。とりあえず、真摯に活動を続けていれば大丈夫だろう」

「だね! よぉし頑張るぞ~」


(とりあえず、今は生徒会諸々は忘れることにしよう。目の前の同好会発足に目を向けて、俺も頑張らないと)


「俺も頑張るよ」

「脱、悪しき噂だね?」

「あぁ」


 こうして無事にレイアウトの件も片が付き、俺達は本格的に今後の流れをざっと振り返る。大体は休み前に皆で固めていたいたが、その確認も込めた作業だった。


「じゃあ、最初の内は基本的に校内のボランティア活動メインって感じだよね?」

「その方向で行きたいと思う。まぁ、依頼件数もほぼゼロだと思うけど、俺たち自身も流れに慣れる必要があるからな」


「おっけぃ。そんで周知の仕方は、ポスター掲示と校内新聞を手掛ける生徒会さんへ依頼ね?」

「そうだ。ポスターについてはクルミがゴールデンウィーク中に仕上げてくれるらしいから、ありがたく使わせてもらおう」


「貼るのは任せてよ! それから徐々に地域の活動へも参加を考えていくと……依頼があれば同好会内で吟味してって流れで合ってる?」

「間違いない。決して単独で決めないことだな。もちろん代表者だからと言って、俺の独断でも活動の決定はしない。そういう行動はロクなことにならないからな」


「うんうん。あとは何か今後に向けた展望とかありますか? 会長?」

「いや、なんだよ会長って!」


「だって同好会の代表者なら会長でしょ? 井上会長?」

「頼むから普通の呼び方してくれ」


「良い響きだと思うけどなぁ」

「それでもダメだ。えっとそれで? 今後の展開ね……出来るなら生徒個人の悩み相談とか、困りごとの手助けもしたいな。ボランティアの意味にそぐわない訳でもないだろうしな」


「おぉ、チャラ男相談所? インパクト有りそう!」

「興味本位の奴らは門前払いだ。真面目な相談しか受けないからな? そこを判断してもらうのも春葉達皆の役目だから頼むぞ? 副会長」

「えっ? ふっ、副会長?」


(必然的にそうなろうだろうさ)


「賛同者第1号なんだから、当たり前だろ。桐生院副会長?」

「あの、普通の呼び方でお願いするよぉ」


「俺の気持ちが分かっただろ? ははっ」

「ものすごく分かりましたぁ! ふふっ」


 こうして笑い合いながらも、着実に近付きつつある同好会発足の瞬間に、嬉しさを噛み締める。


 とはいえ、これが始まりではない。むしろここからだと気を引き締めながらも、今だけは春葉と一緒に笑っていたいと思う。


 コンコン


(ん? 誰だ)


「はーい」

「失礼するよ!」


(父さん?)


「居た居た春葉ちゃん! 実はもう1つ試着をお願いしたいブラジャーがあってね? これなんだけど……」

「はぁ!?」


(なっ! 何持ってきてんだよ!)


「えっ? うわぁ可愛いですねぇ」


(って、春葉! 何率直な感想言ってんだよ!)


「だろだろ? ちなみに内側のパット部分には新素材を使っていてね? 蒸れにくさと軽さを両立出来ているはずなんだけど……」

「本当ですか? 良いとこ取りじゃないですか! 付けても良いですか?」


 ちょっとした余韻を感じる間もなく、井上家は平常運転の様だ。


「ちょっと待て! ここで脱ごうとするな春葉! 現物をそのまま持ってくるんじゃねぇよ父さん!」



次話も宜しくお願いします<(_ _)>

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