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86

おはようございます!昨日はご馳走様でした!


おう。デスク周りがスッキリしたよ。ありがとな。


またいつでも片付けます!


...次は豚肉で頼むぞ...


どうやら山下は小遣いの殆どを昨日で使い果たしたようだ。


山下。こんな時に何だが、この事件、どう思う?


お前が俺に相談とは珍しいな。どうした?


家路は古い資料を山下に見せた。それは、15年前の殺人事件のものだった。


これって、俺達が捜査一課に配属されて初めて立ち会った事件だな。まだ気にしてるのか?


そりゃあな。初めての事件で追い詰めておいて、もう一歩のところで逃してしまったんだ。未だに忘れられん。


何ですか?家路さんにもそんな時があったんですか?


誰にでもあるさ。


聞かせて頂けませんか?


人の過去の汚点をほじくり返すのはあまりいい趣味ではないな。


すみません。


まぁいい。もしかしたらお前達がヒントをくれるかもしれないからな。

15年前の4月1日。季節外れのどか雪が降った日だった。山下と俺は捜査一課に配属されてすぐ。署の敷地内の雪掻きに駆り出されていた。その時近くで火事があった。一軒家が燃えていたんだ。灰となった現場から焼死体が発見された。調べの結果、行方不明となっていた家主の岡田信次本人だと分かった。


行方不明者の焼死体?何処か別の場所で殺されたんですか?


それがな。実際のところ、岡田本人かどうかは分からないんだ。焼け焦げた骨の形状、歯の治療の後等を調べた。捜査一課は、岡田本人だろうという結果を出して捜査を終わらせたんだ。そこがどうも納得いかなくてな。当時入りたての俺達にはどうにも出来なかった。

鑑識が出した結果に口を出すってことは警察組織そのものを疑うことになるって言われてな。それを言われたら当時の俺達は引き下がるしか出来なかった。


そこからだよ。こいつが事件解決のスピードを大事にしたのは。

誰にもなにも言わせないって、鑑識とも仲良くなって、推理するだけの情報を出来るだけ集められるようにしてな。持ち前の推理力で信用を集めた。今となっては、まずは家路に相談って立ち位置だ。


そういうお前も、随分周囲と仲良く付き合うようになったな。上司にも、納得いかないと噛みついていたくせに。


お前を見ていたら、そんなことしてる場合じゃないと思っただけだ。そんな暇あったら足を動かして証拠や情報を持ってくるのが俺の仕事だと思った。お前みたいに推理力がある訳じゃないからな。


そのお陰で、随分捜査しやすくなった。


...なんか、いい関係っすね。


お前らにも分かるさ。俺達から見たら、お前と後藤は若い頃の俺達を見てるようだぞ。


俺達の初めての事件...窃盗っすよ。


そういうことじゃねぇよ。

それに、いいじゃねぇか。窃盗でも。2人できちんと始末つけたんだろ?


家路さんの推理に頼りましたけどね。


...じゃあ今から作れ!


山下。それは、犯罪よ起これ!と言ってるようなもんだぞ。俺達が何も語らない程平和なのが一番世の中平和なんだ。


いちいち挙げ足とりやがってまったく...

とにかく!お前達はいいコンビだ。これからも頑張れ!これならいいだろ?家路。


...まぁ。そもそも俺に許しを乞わなくていいだろ。


山下はぶつぶつ言いながら安田を連れて喫煙所に向かった。

家路がデスクに向き直すと、そこには静かに後藤が捜査資料を見ていた。


家路さん。この焼死体の近くの柱のようなものに書かれた86って何ですか?


それが分からん。岡田の家は生け花の家元だった。それに掛けた言葉。例えば薔薇とかな。


薔薇ですか...


古い事件だ。証拠も焼けてしまっている。同じような事件は起こっても、関連性が見当たらない。推理するにも、その材料が極端に少なすぎる。


もし、この86だけじゃない他の数字があったら?


あったらな。だが、残されたのはその数字だけだ。数字のダイイングメッセージだとしたら、と考えた時もあったがな。


後藤は暫く考えたが、何も思い付かず、ただ、86という数字だけが頭の片隅に残された。


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